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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (174 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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耐容上限量については、欠乏と同様に、通常の食事を摂取している限り過剰症を発症することはな
いが、サプリメント等の通常の食事以外からの摂取による急性過剰症として血液凝固障害の回避を目
的として耐容上限量を定めた。

3 健康の保持・増進
3-1 欠乏の回避
3-1-1 必要量を決めるために考慮すべき事項
ビタミンEの欠乏により、赤血球の脆弱化及びニューロン(特に末梢軸索や脊髄後角ニューロン)
の変性が起こるため、欠乏症としては溶血性貧血及び神経脱落症状が挙げられる。血中α-トコフェ
ロール濃度が 12 µmol/L 以下で溶血反応のリスクが高まるとされている 88)。しかし、α-トコフェロ
ール摂取量と溶血反応の用量反応性は不明である。
ヒトを対象とした研究では、ビタミンEの生体指標として、血中α-トコフェロール濃度がしばし
ば用いられている。しかし、血中α-トコフェロール濃度は、食事からのα-トコフェロール濃度を必
ずしも反映せず、それらの相関性は低いことが示唆されている 89,90)。また、血中α-トコフェロール
濃度は、血中コレステロールやトリグリセリド濃度の影響を受けるため 91)、これらの濃度で調整を行
う必要があるが、調整後の明確な基準値はまだ存在しない。α-トコフェロールの代謝物であり、尿中
に排泄されるα-CEHC も有用視されているが 92–94)、食事摂取基準で用いるだけの報告は蓄積されて
いない。以上より、現時点において信頼性が高くかつ十分な報告が蓄積している生体指標は存在しな
いと判断した。
3-1-2 目安量の策定方法
不足を示す明確な臨床症状や信頼度の高い生体指標が存在しないため、ビタミンEの必要量を正確
に算定することは困難である。そこで、目安量を設定することとした。多価不飽和脂肪酸の摂取が制
限された条件下での検討では、多価不飽和脂肪酸を細胞膜で機能させるために最低限必要なα-トコ
フェロール摂取量は 4~5 mg/日と報告している 90)。さらに、多価不飽和脂肪酸摂取量 1 g に対するα
-トコフェロール必要量は 0.43 mg95)、0.52 mg96)との報告もあり、小児や 97)、若年成人女性を対象とし
た研究 98)でも、
血漿ビタミンE濃度を一定量に維持するためには 0.4 mg の摂取で十分とされている。
なお、ドイツ・オーストリア・スイスの食事摂取基準では、リノール酸 1 g の摂取に対してトコフェ
ロール当量で 0.4 mg42)、北欧諸国の食事摂取基準 40)では、0.5 mg が用いられている。
上記の報告を参考にして、
成人においては最低限の必要量として 4 mg を確保する必要があるとし、
その他関連する状況を勘案して、次のように目安量を定めた。
・成人(目安量)
多価不飽和脂肪酸 1 g に対するビタミンE必要量を 0.4 mg として、国民健康・栄養調査(平成 30
年・令和元年)の結果を用いて、性・年齢別の多価不飽和脂肪酸摂取量(平均値)に対応するビタミ
ンE摂取量を算出すると、成人における最低限必要量の 4 mg を下回る区分はなかった。一方、ビタ
ミンE摂取量は、いずれの性・年齢区分でも多価不飽和脂肪酸摂取量に対応するビタミンE摂取量を
上回っており、現状のビタミンE摂取量であれば、多価不飽和脂肪酸摂取に対して適切なビタミンE
摂取量を維持できると判断した。
この種の食事調査法では一定の過小評価が観察されるため 99)、実際にはこの数値よりも少し多く摂

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