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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (196 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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2 指標設定の基本的な考え方
推定平均必要量の設定の基本的な考え方について統一を図るため、不足又は欠乏の症状を回避する
ための摂取量として検討した。
ビタミンB1 摂取量が 1,000 kcal 当たり 0.2 mg 以下であると欠乏の症状が出現するおそれがあり、
1,000 kcal 当たり 0.3 mg であれば欠乏の症状は認められない 5)。しかし、臨床症状の発現には様々な
要素が関連するために、臨床症状に基づいて推定平均必要量を設定するのは困難である。そこで、ビ
タミンB1 の栄養状態を反映する生体指標に基づいて、推定平均必要量を設定することにした。ビタ
ミンB1 の栄養状態を反映する生体指標として、血中ビタミンB1 濃度、尿中チアミン排泄量、赤血球
トランスケトラーゼ活性が用いられている。これらのうち、ビタミンB1 の不足、欠乏に鋭敏に反応
する赤血球トランスケトラーゼ活性が信頼性の高い生化学的指標とされている 5)。トランスケトラー
ゼはグルコース代謝経路の 1 つであるペントースリン酸経路の酵素であり、ThDP を補酵素としてケ
トール基転移反応を触媒する。ビタミンB1 が不足、欠乏すると、細胞内 ThDP 濃度の低下に伴ってビ
タミンB1 を必要とするトランスケトラーゼなどの酵素の活性が低下し、ビタミンB1 が関与する代謝
経路が十分に機能しなくなる。ThDP 添加前後で酵素活性を測定し、添加により赤血球トランスケト
ラーゼ活性が上昇すれば、ビタミンB1 の不足及び欠乏の状態を判定することができる。この生体指
標を赤血球トランスケトラーゼ活性係数(αETK)という。赤血球トランスケトラーゼ活性係数とビタ
ミンB1 摂取量との関係について調べた報告 6)に基づいて、ビタミンB1 の不足の回避に必要な摂取量
として推定平均必要量を設定した。

3 健康の保持・増進
3-1 欠乏の回避
3-1-1 必要量を決めるために考慮すべき事項
ビタミンB1 の主要な役割は、エネルギー産生栄養素の異化代謝の補酵素である。したがって、必
要量をエネルギー消費量当たりの値として算定した。
3-1-2 推定平均必要量、推奨量の策定方法
・成人・小児(推定平均必要量、推奨量)
ビタミンB1 が正常な機能を発揮しているとき、赤血球トランスケトラーゼ活性係数は 15%以下で
あると報告されている 5)。ビタミンB1 の欠乏-回復試験において、赤血球トランスケトラーゼ活性係
数を 15%以下に維持できるビタミンB1 の最小摂取量は 0.30 mg/1,000 kcal であったと報告されている
ことから 6)、この値を 1~64 歳の推定平均必要量を算定するための参照値とし、対象年齢区分の推定
エネルギー必要量を乗じて推定平均必要量を算定した。比較的少人数を対象とした介入試験の結果に
基づいているため、不確実性の観点から個人間の変動係数を 20%と見積もり 5)、推奨量は推定平均必
要量に推奨量算定係数 1.4 を乗じた値とした。
・高齢者(推定平均必要量、推奨量)
65 歳以上の必要量の算定に当たり、特別の配慮が必要であるというデータはないことから、成人
(18~64 歳)と同様に 0.30 mg/1,000 kcal を推定平均必要量算定の参照値とし、対象年齢区分の推定
エネルギー必要量を乗じて推定平均必要量を算定した。推奨量は、推定平均必要量に推奨量算定係数
1.4 を乗じた値とした。
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