「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (430 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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I diet(脂肪エネルギー比率 30%以下、飽和脂肪酸 10%エネルギー以下、コレステロール 300 mg/日以
下)及び Step II diet(脂肪エネルギー比率 30%以下、飽和脂肪酸 7%エネルギー以下、コレステロール
200 mg/日以下)をまとめたメタ・アナリシスでは、コレステロールと飽和脂肪酸を制限する食事介入
により血清脂質は有意に改善し、食事として摂取する飽和脂肪酸を 1%エネルギー減らすごとに総コ
レステロール、LDL-コレステロールをそれぞれ 0.056 mmol/L(2.2 mg/dL)、0.05 mmol/L(1.9 mg/dL)
低下させることが示された 5)。また低脂肪食(30%エネルギー未満)と高脂肪食(30%エネルギー以
上)を比較した無作為割付比較試験のメタ・アナリシスでは低脂肪食で総コレステロール、LDL-コレ
ステロールが低下することが示されている 6)。したがって、血中 LDL-コレステロールの低下には適正
な総エネルギー摂取量のもとで脂肪エネルギー比率を制限することが有効である。「動脈硬化性疾患
予防ガイドライン 2022 年版」では、高 LDL-コレステロール血症の場合は、脂肪エネルギー比率 20~
25%エネルギーを勧めている 1)。
2-1-2 飽和脂肪酸
飽和脂肪酸摂取量と血清(又は血漿)総コレステロールが正の関連を有することは、Keys の式 7)及
び Hegsted の式 8)として古くからよく知られていた。
Keys の式:⊿血清総コレステロール(mg/dL)=2.7×⊿S-1.35×⊿P+1.5×⊿ ( )
Hegsted の式:⊿血清総コレステロール(mg/dL)=2.16×⊿S-1.65×⊿P+0.068×⊿C
ここで、⊿S:飽和脂肪酸摂取量の変化量(%エネルギー)
⊿P:多価不飽和脂肪酸摂取量の変化量(%エネルギー)
⊿ ( ):コレステロール摂取量(mg/1,000 kcal)の変化量
:100 mg/1.000 kcal 摂取が増えると 15 mg/dL 上昇することを意味する
⊿C:コレステロール摂取量(mg/2,600kcal)の変化量
現在の日本人の成人においてそれぞれの摂取量を変えた場合に期待される血清総コレステロール
の変化を図2に示した。なお、Keys の式は、日本人成人でもほぼ成立することが報告されている 9)。
2 年以上飽和脂肪酸摂取制限を行った無作為化比較試験のメタ・アナリシスでは、心血管疾患の発症
リスク及び総コレステロールと LDL-コレステロールの低下が認められている 10)。また、27 の介入試
験をまとめたメタ・アナリシスによれば、5%エネルギーを炭水化物から飽和脂肪酸に変えると、平均
して 6.4 mg/dL の血清 LDL-コレステロールの上昇が観察されている 11)。研究数を増やした別のメタ・
アナリシスでもほぼ同様の結果が得られている 12)。他の無作為化比較試験又はそれらのメタ・アナリ
シスでも、飽和脂肪酸を減らすことで総コレステロール、LDL-コレステロールを低下させるが、HDLコレステロールに関しては一定ではなく、トリグリセライドには有意な変化が認められないという報
告が多い 10,13–19)。我が国の NIPPON DATA90 では、飽和脂肪酸摂取量と総コレステロール、LDL-コレ
ステロールとの間に正の相関があることが示された 20)。また、INTERLIPID study では、食事中の多価
不飽和脂肪酸/飽和脂肪酸比は総コレステロール及び LDL-コレステロールと負の相関を示し、トリ
グリセライドや HDL-コレステロールとは関連しなかった 21)。したがって、適正な総エネルギー摂取
量のもとで飽和脂肪酸を減らすこと、又は飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸に置換することは、血清脂
質の改善に有効であり、冠動脈疾患の発症予防にも有効と考えられる。一方、飽和脂肪酸を極度に制
限することは脳内出血の発症と関連する可能性があるが、現在の日本人の平均的な摂取量(7.8~9.5%
エネルギー)を考慮すると、日本人の食事摂取基準及び「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022 年
版」1)において、飽和脂肪酸の摂取上限をそれぞれ 7%エネルギー以下及び 7%エネルギー未満と設定
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