「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (139 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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1 基本的事項
炭水化物(carbohydrate)は、細分類(特に、糖類・多糖類の別、多糖類は更にでんぷんと非でんぷ
ん性多糖類の別)によって栄養学的意味は異なる。日本食品標準成分表 2020 年版(八訂)1,2)では炭
水化物成分表の充実が図られ、細分類ごとの摂取量を推定できる条件が整いつつある。一方、食物繊
維については従来のプロスキー変法ではなく AOAC.2011.25 法を用いて測定した成分値が多く収載さ
れた。プロスキー変法と AOAC.2011.25 法では測定している食物繊維の範囲が異なり、食品によって
は日本食品標準成分表 2015 年版(七訂)3)と日本食品標準成分表(八訂)1,2)との間で食物繊維含有量
が大きく異なる。また、いまだプロスキー変法による測定値のみが示されている食品も多く、食物繊
維のうちどの物質が測定されているのかは食品ごとに異なる状態になっている。
こういった現状を踏まえた上で、ここでは総炭水化物と食物繊維について、その栄養学的意義と食
事摂取基準としての指標及びその値について記す。また、糖類(単糖類、二糖類)については、諸外
国・組織において推奨される摂取量が定められている場合が多く、日本における現状と課題を記す。
1-1 定義と分類
炭水化物は、組成式 Cm(H2O)n からなる化合物である。炭水化物は、単糖あるいはそれを最小構
成単位とする重合体である。
炭水化物は、生理学的にはヒトの消化酵素で消化できる易消化性炭水化物と消化できない難消化性
炭水化物に分類できる 4)。食物繊維という名称は生理学的な特性を重視した分類法であるが、食物繊
維の定義は国内外の組織間で少しずつ異なり、また測定法の進歩とあいまって時間とともに変化して
いる 5,6)。通常の食品だけを摂取している状態では、摂取される食物繊維のほとんどが非でんぷん性多
糖類であり、難消化性炭水化物とほぼ一致する。
食物繊維の定義はまだ十分には定まっていないが、食事摂取基準ではその科学性をある程度担保し
つつ、活用の簡便性を図ることを目的として、難消化性炭水化物を食物繊維と呼ぶこととし、炭水化
物から食物繊維を除いた部分を糖質と呼ぶ。また、食事摂取基準では、単糖類と二糖類を合わせたも
のを糖類と呼ぶこととする。
1-2 機能
栄養学的な側面からみた炭水化物の最も重要な役割は、エネルギー源である。炭水化物から摂取す
るエネルギーのうち、食物繊維に由来する部分はごく僅かであり、そのほとんどは糖質に由来する。
したがって、エネルギー源としての機能を根拠に食事摂取基準を設定する場合には、炭水化物と糖質
の食事摂取基準はほぼ同じものとなり、両者を区別する必要性は乏しい。
糖質は、約 4 kcal/g のエネルギーを産生し、その栄養学的な主な役割は、脳、神経組織、赤血球、
腎尿細管、精巣、酸素不足の骨格筋等、通常はぶどう糖(グルコース)しかエネルギー源として利用
できない組織にぶどう糖を供給することである。脳は、体重の 2%程度の重量であるが、総基礎代謝
量の約 20%を消費すると考えられている 7)。基礎代謝量を 1,500 kcal/日とすれば、脳のエネルギー消
費量は 300 kcal/日になり、これはぶどう糖 75 g/日に相当する。上記のように脳以外の組織もぶどう糖
をエネルギー源として利用することから、ぶどう糖の必要量は少なくとも 100 g/日と推定され、すな
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