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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (317 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 摂取状況
平成 30・令和元年国民健康・栄養調査における日本人成人(18 歳以上)の銅摂取量(平均値±標準
偏差)は、1.24 ± 0.44 mg/日(男性)、1.07 ± 0.39 mg/日(女性)である。
3-2-2 耐容上限量の策定方法
・成人・高齢者(耐容上限量)
先に述べたように、血漿・血清銅濃度は、銅の摂取量 0.57~6.9 mg/日の範囲で一定である 99)。血漿・
血清銅濃度の上昇を直ちに健康障害の発現とみなすことはできないが、6.9 mg/日は参考にすべき数値
である。一方、10 mg/日の銅サプリメントを 12 週間継続摂取しても異常を認めなかったとする報告が
ある 104)。以上より、健康障害非発現量を 10 mg/日とみなし、血漿・血清銅濃度の上昇を起こさない
ために、不確実性因子を 1.5 として、耐容上限量を男女一律に 7 mg/日とした。なお、欧州食品科学委
員会では耐容上限量を 5 mg/日 105)、アメリカ・カナダの食事摂取基準 103)とオーストラリア・ニュー
ジーランドの食事摂取基準 106)では耐容上限量を 10 mg/日としている。
・小児・乳児(耐容上限量)
十分な報告がないため、小児及び乳児の耐容上限量は設定しなかった。
・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
十分な報告がないため、妊婦及び授乳婦に特別な耐容上限量は設定しなかった。

3-3 生活習慣病等の発症予防
銅の摂取と糖尿病発症リスクの関連を検討した疫学研究の結果は一致していない 107,108)。また、銅
の摂取量と高血圧の発症の関連を検討した研究では、1 日当たり 1.57 mg 未満の銅摂取量では、食事
性銅摂取量の増加に伴い高血圧の発症リスクが減少し、それ以上では、食事性銅摂取量の増加に伴い
高血圧の発症リスクが増加するとしている 109)。一方、高齢女性を対象に様々なサプリメントの使用
と全死亡率との関連を検討した疫学研究においては、銅サプリメントの使用が全死亡率を上昇させる
ことが認められている 54)。このことは、サプリメントの使用が推奨量を大きく超える量の銅の摂取に
つながり、健康に悪影響を及ぼす可能性を示唆している。
以上より、銅の摂取量が糖尿病や高血圧の発症に関連する可能性はあるが、推奨量を超える銅の積
極的な摂取は、耐容上限量未満であっても健康に悪影響を及ぼす可能性は否定できないと判断し、生
活習慣病予防のための目標量(下限値)を定めることは妥当でないと判断した。

4 生活習慣病等の重症化予防
糖尿病の患者では血清銅濃度が高いという報告がある 107)。また、冠状動脈造影を受けている患者
を追跡した研究では、血清銅濃度の高い群において、全死亡率と冠状動脈疾患の死亡率が上昇してい
る 110)。このように、血清銅濃度の上昇は生活習慣病を重症化させる可能性があるが、耐容上限量未
満の摂取であれば、血漿・血清銅濃度の上昇は生じないと考えられることから、重症化予防のための
目標量(上限値)も設定しなかった。

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