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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (72 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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〈参考資料〉推定エネルギー必要量
1 基本的事項
エネルギー必要量は、WHO の定義に従い、「ある身長・体重と体組成の個人が、長期間に良好な
健康状態を維持する身体活動レベルのとき、エネルギー消費量との均衡が取れるエネルギー摂取量」
と定義する 59)。なお、後述するように、身体活動レベルは、「エネルギー消費量÷基礎代謝量」で定
義される。さらに、エネルギー必要量は、比較的短期間の場合には「そのときの体重を保つ(増加も
減少もしない)ために適当なエネルギー」と定義される。また、乳児・小児、妊婦又は授乳婦におい
ては、エネルギー必要量には良好な健康状態を維持するための組織沈着あるいは母乳分泌量に見合っ
たエネルギー量という意味合いを含む。
エネルギー消費量が一定の場合、エネルギー必要量よりもエネルギーを多く摂取すれば体重は増加
し、少なく摂取すれば体重は減少する。したがって、理論的にはエネルギー必要量には「範囲」は存
在しない。これはエネルギーに特有の特徴であり、栄養素と大きく異なる点である。すなわち、エネ
ルギー必要量には「充足」という考え方は存在せず、「適正」という考え方だけが存在することを意
味する。その一方で、後述するように、エネルギー必要量に及ぼす要因は性・年齢区分・身体活動レ
ベル以外にも数多く存在し、無視できない個人間差(又は個人差)としてそれは認められる。したが
って、性・年齢区分・身体活動レベル別に「適正」なエネルギー必要量を単一の値として示すのは不
可能であり、同時に、活用の面からもそれはあまり有用ではない。
自由な生活を営んでいる人のエネルギー必要量を知るには、体重が一定の条件下で、(1)何らかの
方法で食事調査を行い、エネルギー摂取量を測定する方法、(2)何らかの方法でエネルギー消費量を
測定する方法(最も正確に測れる方法は二重標識水法である)、(3)何らかの方法で基礎代謝量と身
体活動レベル(後述する)を測定し、この積を取る方法の 3 種類が知られている。今回の食事摂取基
準では、3 つ目の「基礎代謝量と身体活動レベルを測定し、この積を取る方法」を採用した。この理
由は後述する。なお、ここで与えられる数値は対象者又は対象集団にとっての推定値であるため、推
定エネルギー必要量(estimated energy requirement:EER)と呼ぶこととした。

2 エネルギー必要量の推定方法
2-1 食事調査
体重が一定の場合は、理論的には、「エネルギー摂取量=エネルギー必要量」である。したがって、
理論的にはエネルギー摂取量を測定すればエネルギー必要量が推定できる。しかし、特殊な条件下を
除けば、エネルギー摂取量を正確に測定することは、申告誤差(特に過小申告)と日間変動という 2
つの問題が存在するために極めて困難である。
過小申告は系統誤差の一種であり、集団平均値など集団の代表値を得たい場合に特に大きな問題と
なる(『Ⅰ 総論、4 活用に関する基本的事項、4-2 食事評価と留意点』を参照)。原因は多岐に渡る
が、食事記録法、質問紙法を含むほとんど全ての食事調査法において、無視できない系統的な過小申
告が認められている 60)。二重標識水法によるエネルギー消費量の測定と同時期に食事調査を行った
100 の研究では、第三者が摂取量を観察した場合を除き、通常のエネルギー摂取量を反映するエネル
ギー消費量に対して、食事調査によって得られたエネルギー摂取量は総じて小さく、かつ、BMI が大
きくなるにつれて過小評価の程度は甚だしくなっていた(詳細は参考文献 61 を参照のこと)
(図6)。
一方、日間変動は偶然誤差の性格が強く、一定数以上の対象者を確保できれば、集団平均値への影
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