「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (144 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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4-1 健康の保持・増進
4-1-1 生活習慣病の発症予防
4-1-1-1 目標量の策定方法
・成人・高齢者(目標量)
食物繊維摂取量と主な生活習慣病の発症率又は死亡率との関連を検討した疫学研究(及びそのメ
タ・アナリシス)のほとんどが負の関連を示している。例えば、WHO の炭水化物摂取量に関するガ
イドラインで採用された 185 の前向き研究及び 58 の介入研究をまとめたメタ・アナリシスでは、少
なくとも 1 日当たり 25~29gの食物繊維の摂取が、様々な生活習慣病のリスク低下に寄与すると報
告している 26)。一方で、同研究では食物繊維摂取量と生活習慣病リスクとの間に明らかな閾値が存在
しないことも指摘されており、より多い摂取量で更なる疾病罹患リスクの低下が認められる可能性を
示唆している 26)。以上より、健康への利益を考えた場合、「少なくとも 1 日当たり 25g」は食物繊維
を摂取した方が良いと考えられる。
しかし、平成 30・令和元年国民健康・栄養調査に基づく日本人の食物繊維摂取量の中央値は、全て
の年齢区分でこれらよりかなり少ない(表2)。そのために、この値を目標量として掲げてもその実
施可能性は低いと言わざるを得ない。そこで、下記の方法で目標量を算定することとした。
現在の日本人成人(18 歳以上)における食物繊維摂取量の中央値(13.3 g/日)と、25 g/日との中間
値(19.2 g/日)をもって目標量を算出するための参照値とした。次に、成人(18 歳以上男女)におけ
る参照体重(58.6 kg)と性・年齢区分ごとの参照体重を用い、その体重比の 0.75 乗を用いて体表面積
を推定する方法により外挿し、性・年齢区分ごとの目標量を算出した。
具体的には、
19.2(g/日)×〔性・年齢区分ごとの参照体重(kg)÷58.6(kg)〕0.75
により得られた値を整数にした上で、隣り合う年齢区分間で値の平滑化を行った(表2)。
ところで、目標量の算定に用いられた研究の多くは、通常の食品に由来する食物繊維であり、サプ
リメント等に由来するものではない。したがって、同じ量の食物繊維を通常の食品に代えてサプリメ
ント等で摂取したときに、ここに記されたものと同等の健康利益を期待できるという保証はない。さ
らに、食品由来で摂取できる量を超えて大量の食物繊維をサプリメント等によって摂取すれば、ここ
に記されたよりも多くの(大きな)健康利益が期待できるとする根拠はない。
・小児(目標量)
食物繊維摂取量が、対象とする生活習慣病等の発症や重症化予防に直接に関与しているとする報告
は小児では乏しい。小児期~思春期の食物繊維摂取量と後の体重や血清脂質、血糖値などとの関連を
見たコホート研究を集めたシステマティック・レビューでも、この年代でのエビデンスは十分ではな
く、成人の摂取量からの外挿で小児の食物繊維摂取量の指標を定めることを提案している 39)。
生活習慣病の発症には長期間にわたる習慣的な栄養素摂取量が影響することから、小児期の食習慣
が成人後の循環器疾患の発症やその危険因子に影響を与えている可能性が示唆されている 40)。また、
小児期の食習慣はその後の食習慣にある程度影響しているという報告も複数ある 41,42)。このようなこ
とにより、小児期においても食事摂取基準を設定することが勧められている 43)。
小児において発生頻度の高い健康障害として便秘がある。高食物繊維摂取が便秘の改善に及ぼす効
果をまとめたシステマティック・レビューでは、高食物繊維摂取は便秘の改善に効果があるとした報
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