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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (433 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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取り込み量、腸管での摂取量及び吸収量と直接の排泄量、胆汁酸の排泄量により調整され、肝臓にお
けるコレステロールの合成は 10%程度であるが、肝臓は血液中のコレステロール調節の約 7 割を担っ
ている 42,43)。肝臓は、LDL 受容体の発現調節でコレステロールの取り込みを調整している最大の臓器
である。コレステロールの腸管での吸収率は個人によって大きく異なることから 44–46)、コレステロー
ル摂取量が血清コレステロールに及ぼす影響が大きい者(hyper-responder)と小さい者(hypo-responder)
がいることにも留意すべきである。2013 年のアメリカ心臓協会とアメリカ心臓学会の発表では、コレ
ステロール摂取量基準が撤廃され 47)、その後のアメリカの Dietary guideline 2020-2025 においても踏襲
されている 48)。ただし、このガイドラインは食事性コレステロールの管理の重要性を否定するもので
はなく、可能な限り健康的な食事パターンを遵守し、できる限りコレステロールの摂取を控えること
(as low as possible)を推奨している。アメリカで行われた 6 つのコホート研究のデータをまとめて解
析した研究 49)では、コレステロール摂取量の最頻値は 200 mg/日であった。日本人の成人のコレステ
ロール摂取量の平均値は男性で 366 mg/日、女性で 317 mg/日、脂肪エネルギー比率が 23~27%エネル
ギーである 50)のに対して、アメリカではそれぞれ 282 mg/日 51)と 34.7%エネルギー52)である。欧米で
は総脂質制限が強調されるが、摂取量の違いを踏まえて、我が国では総脂質と食事性コレステロール
の両者に注意すべきと考えられる。欧州のガイドラインにおいても、コレステロールの摂取基準は 300
mg/日未満が推奨されている 53)。日本動脈硬化学会による「動脈硬化性疾患予防ガイドライン 2022 年
版」では、冠動脈疾患のリスクに応じて LDL-コレステロールの管理目標値が定められており、高 LDLコレステロール血症患者では、コレステロールの摂取を 200 mg/日未満、飽和脂肪酸の摂取を 7%エネ
ルギー未満にすることにより、LDL-コレステロール低下効果が期待できるとしている 1)。
なお、前述のアメリカで行われた 6 つのコホート研究では、コレステロール摂取量及び鶏卵摂取量
と循環器疾患発症率及び総死亡率の間にいずれも有意でほぼ直線的な正の関連が観察されている 49)。
その後に報告されたアメリカの別のコホート研究で、心血管疾患及びがんに罹患していない閉経後女
性においても同様の結果が確認されている 54)。一方、22 のコホート研究のメタ・アナリシスでは、鶏
卵摂取量と脳卒中及び冠動脈疾患との間には有意な関連はなかったが、糖尿病患者ではどちらとも正
の有意な相関が認められている 55)。14 のコホート研究のメタ・アナリシスでは鶏卵摂取量と冠動脈
疾患との間に正の相関を示し、さらに糖尿病発症との関連を認めている 56)。あるメタ・アナリシスで
は鶏卵摂取による総コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロールの増加が認められ
57)、hyper-responder と hypo-responder で分けて解析した別のメタ・アナリシスでは、鶏卵摂取は hyper-

responder で有意に LDL-コレステロールを増加させた一方で、hypo-responder では有意な増加が認め
られなかった 58)。また日本人における鶏卵摂取と血清脂質や心血管疾患発症の関連の報告をみると、
JPHC 研究では、週当たりの鶏卵摂取量と冠動脈疾患発症と関連はなかったものの 59) 、NIPPON
DATA80 では、女性で虚血性心疾患及び総死亡率との有意な正の関連が認められている 60)。
以上より、日本人の食事摂取基準において、少なくとも循環器疾患予防の発症予防の観点から目標
量(上限)を設けるのは難しいが、これは許容されるコレステロール摂取量に上限が存在しないこと
を保証するものではなく、脂質異常症の重症化予防の観点からは、200 mg/日未満に留めることが望ま
しい。

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