「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (462 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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極端な食塩制限による保護効果が期待できるとは限らない。死亡や心血管イベントに対して 50 mEq/
日(食塩 3 g/日)程度を境にJ字型現象が見られ、食塩摂取量が少なくなるほど死亡率や末期腎不全
が増加することが報告されている 30)。
CKD 患者の重症化予防を目的とした食塩摂取量は、血圧管理を目的とした単純な数値の調整では
なく、その先にある臓器障害やライフイベントの抑制であるように、食塩摂取量の管理の目的もまた
こうしたイベントの抑制にある。日本腎臓学会の「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版」は、
CKD 患者においては下限値も考慮して、ステージを問わず 3 g/日以上、6 g/日未満を推奨している 6)。
小児の場合、CKD の原因疾患として先天性腎尿路異常(CAKUT:congenital anomalies of the kidney
and urinary tract)の割合が多く、尿細管・間質異常により塩類喪失・多尿型を示すことがある。不適
切なナトリウム制限が腎機能障害を一層悪化させる原因になるため、特にミルク栄養の期間は適切な
食塩付加を考慮する 16)。幼児食として味付けを自分で調整するようになる 2~3 歳頃になったら、付
加は不要だが制限をせずに本人の嗜好に任せることが望ましい。高血圧を合併する場合、尿量が減少
してきた場合には調節が必要である。
2-3 たんぱく質
治療の根幹である食事療法は、たんぱく質摂取量の制限が中心で、腎臓を保護することを主目的と
している。なお、たんぱく質制限の程度により、たんぱく質制限、低たんぱく質、超低たんぱく質(厳
しいたんぱく質制限)などの用語はあるが、明確な定義があるわけではなく、ここでは「たんぱく質
制限」とする。
2-3-1 ステージとたんぱく質制限の意義・効果
たんぱく質制限の意義と効果については、尿蛋白(アルブミン)量の減少、腎機能低下の抑制、腎
代替療法までの期間延長の腎臓アウトカムごとに分けて考える必要がある。なお、たんぱく質制限を
行うことは、ナトリウム、カリウム、リンの摂取制限にもつながり得る点、また、酸負荷を軽減して
代謝性アシドーシスの予防や改善により、CKD のアウトカムに寄与する点も重要である。「エビデン
スに基づく CKD 診療ガイドライン 2023」では、CKD のステージ進行を抑制することが期待されるた
め、腎臓専門医と管理栄養士を含む医療チームの管理の下で、必要とされるエネルギー摂取量を維持
し、たんぱく質摂取量を制限することが推奨されており、その目安としては「慢性腎臓病に対する食
事療法基準 2014 年版」による、ステージ G3a で 0.8~1.0 g/kg 標準体重/日、G3b 以降では 0.6~0.8 g/kg
標準体重/日が提示されている 1,6)。
たんぱく質制限の効果について、尿蛋白(アルブミン)量の減少に関しては、代表的な無作為化比
較試験である、ステージ G3a を含む MDRD study A では、0.58 g/kg 体重/日のたんぱく質制限食では、
1.3 g/kg 体重/日の通常食と比較して、観察開始時の尿蛋白量が 1 g/日未満の対象者に限って尿蛋白量
が有意に減少していた 31)。さらに、この研究を含むメタ・アナリシスでは、たんぱく質制限による尿
蛋白減少効果が認められたとするものが多く 32,33)、尿蛋白の減少には一定の効果があると考えられる。
一方で、糖尿病性腎症(腎症)では、主にアルブミン尿を指標にした研究において、たんぱく質制限
は有効であるというメタ・アナリシスもあるが 34)、有効ではなかったとの報告もあり、一定の見解は
ない。
次に、GFR 低下抑制効果に関するメタ・アナリシス(対象者の平均年齢 55 ± 18 歳)では、年間の
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