「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (259 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
る。日本腎臓病学会編の「エビデンスに基づく CKD 診療ガイドライン 2023」17)では、CKD 患者の重
症化予防のためには、6 g/日未満が推奨されている。
以上のような国内外のガイドラインを検討した結果、高血圧及び CKD の重症化予防を目的とした
量は、食塩相当量 6 g/日未満とする。
5 活用に当たっての留意事項
今回の改定に当たっては、目標量、重症化予防のための値ともに前回と同じ値とした。ただし、こ
れは現在の目標量、重症化予防のための値が最適であるということではなく、前回の策定以降、食塩
摂取量の値に大きな変化がなかったためであり、更なる減塩を続けていくことが必要である。
個人の感受性の違いが存在するが、ナトリウムが血圧の上昇に関与していることは確実である。一
方、カリウムは尿中へのナトリウム排泄を促進し、血圧を低下させる方向に働く。したがって、ナト
リウム/カリウムの摂取比を小さくすることも重要と考えられる。2012 年の WHO のガイドライン 3)
ではナトリウムとカリウムの比率については述べられていないが、2014 年のレビューでは、DASH 食
を始めとした複数の介入研究で、ナトリウム/カリウムの摂取比を下げることが、ナトリウムの摂取
量を減少させること、あるいはカリウムの摂取量を増やすことの、それぞれよりも降圧効果があるこ
とが示されている 40)。さらに、他の観察研究でも同様の結果を示している 41)。
他国のデータは、ナトリウム摂取量が我が国よりも少ない場合も多く、日本人にそのまま当てはめ
ることには問題もある。しかし、日本人を対象とした NIPPON DATA 80 の報告でも、ナトリウム/カ
リウムの摂取比が低いと、総死亡率、循環器疾患による死亡率、脳卒中よる死亡率など高血圧が原因
と考えられる疾患による死亡率が低いことが示されている 42)。日本人においても、ナトリウム/カリ
ウムの摂取比を下げることは有効と考えられる。
現時点でのナトリウムとカリウムの目標量を用いて、具体的なナトリウム/カリウムの摂取比を示
すことは難しいが、ナトリウム摂取量を減らすことを目指すと同時に、カリウムの摂取量を増やすよ
うに心がけることが重要といえる。
なお、高齢者では食欲低下があり、極端なナトリウム制限(減塩)はエネルギーやたんぱく質を始
め、多くの栄養素の摂取量の低下を招き、フレイル等につながることも考えられる。したがって、高
齢者におけるナトリウム制限(減塩)は、健康状態、病態及び摂食量全体を把握・考慮した上で弾力
的に運用すべきである。
6 今後の課題
ナトリウム、カリウムの摂取量は食事調査に加えて、24 時間尿中排泄量の値を用いるようになって
きている。摂取量の評価方法について引き続き検討を行い、整理することが必要である。
249