よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (398 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

2-3 高齢者
1 基本的事項
食事や栄養の面から見た高齢期の留意点として、やせや低栄養の弊害が指摘されている。肥満は健
康リスクになるが 1)、高齢期においては、エネルギーや栄養素の不足もまた、健康リスクにつながる
2–5)

。また、肥満であっても、栄養不良が併存し得ることにも注意を要する 6,7)。健康寿命の延伸の観

点から、これらへの対策が求められる。
高齢者についての食事摂取基準は、エネルギー・栄養素の節において策定の根拠及び値を記述して
いる。ここではその要点を整理した。なお、「日本人の食事摂取基準(2025 年版)」策定の過程にお
いて、フレイルが「生活習慣病及び生活機能の維持・向上に係る疾患等とエネルギー・栄養素との関
連」で扱う疾患等の条件を満たすか、について検討を行った。その結果、通常の食品の組合せで摂取
できる量により、栄養指導を通じてフレイルの症状や状態の改善が見込まれることが明らかな栄養素
はたんぱく質のみであり、複数の栄養素がフレイルの発症や重症化の主要な因子であるエビデンスが
乏しいことが明らかになった。そのため、その過程で整理した条件も含め、本章において扱うことと
した。

1-1 エネルギー代謝
総代謝(1 日当たりの総エネルギー消費量)は、基本的には、基礎代謝、身体活動、食事による産
熱(食事誘発性体熱産生)の総和になる。総代謝は、個人差があるものの、高齢期に減少傾向になり、
特に 60 歳前後から低下が目立ち始める 8)。総代謝の低下は、身体活動量だけではなく、基礎代謝の低
下の影響もある 9)。基礎代謝は、年齢とともに直線的に低下するわけではないが、男性では 40 歳台、
女性では 50 歳台に著しく減少するとされる 10,11)。基礎代謝の減少は、部分的には、除脂肪量(骨格
筋や臓器など)の低下で説明がつく 12,13)。エネルギー消費の多い骨格筋の減少が、基礎代謝の減少に
つながる流れは想定しやすい。加齢に伴う代謝の低下は、必ずしも病的ではないが、エネルギー収支
の不均衡につながる。したがって、エネルギーの摂取と消費の均衡を保つ観点からも、高齢期の身体
活動は重要である 14)。

1-2 たんぱく質代謝と骨格筋
たんぱく質は、生体の機能と構造を支える重要な要素であり、体内で合成と分解が生じているが、
動的平衡を保つように制御されている。体内のたんぱく質が最も分布するのが骨格筋であることから
15)、たんぱく質の代謝において、筋たんぱく質が重視されている。食事摂取により筋たんぱく質合成

が増加し、たんぱく質異化は減少する。これは、食事摂取により増加する栄養素及びそれに関連した
ホルモンの影響である。特に、血中のアミノ酸やインスリンの増加は、食後の骨格筋たんぱく質同化
作用の主要な要因である 16)。一方、炎症性サイトカイン、酸化ストレス、グルココルチコイドなどの
刺激により、様々なたんぱく質分解酵素を介して筋で異化が生じる。異化が亢進してたんぱく質の同
化を上回ると、筋は萎縮する 17)。
アミノ酸の全てに骨格筋たんぱく質同化作用があるわけではなく、必須アミノ酸、特にロイシンの
同化作用が強力とされる 18,19)。必須アミノ酸は、たんぱく質合成の基質になるだけではなく、主要な
たんぱく質合成経路の mammalian/mechanistic target of rapamycin complex 1(mTORC1)とその下流の

388