「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (447 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
制限食群と低炭水化物食群(130 g/日未満)を設定し、6 か月後に各パラメーターを比較すると、総エ
ネルギー摂取量が均しく減少し、体重変化も両群で同等であったものの、低炭水化物食群で HbA1c 値
と血中トリグリセライドの有意な改善が認められたとする報告もある 50)。一方、非アルコール性脂肪
性肝疾患を伴う 2 型糖尿病を対象とした研究では、低炭水化物食群(70~130 g/日未満)は、エネルギー
摂取制限食群と比較して 3 か月後の内臓脂肪面積の有意な減少は認められたが、HbA1c 値や総エネル
ギー摂取量、QOL に有意差はなかったと報告されている 51)。
このように、炭水化物制限による血糖指標と体重変化に対する効果には一定の見解が得られていな
いものの、2 型糖尿病患者において、約 130 g/日の炭水化物制限によって有害事象なく 6 か月後の
HbA1c 値の改善が認められたとの報告もあることから 50)、日本糖尿病学会の「糖尿病診療ガイドライ
ン 2024」22)では、2 型糖尿病の血糖コントロールのために、6~12 か月以内の短期間であれば炭水化
物制限は有用とされている。一方で、総エネルギー摂取量を制限せずに、炭水化物のみを極端に制限
することで体重や HbA1c 値の改善を図ることは、その効果のみならず、長期的な食事療法としての
遵守性や安全性を担保する上での科学的根拠が不足しており、その実施には注意が必要である。
炭水化物の中でも果糖は、血糖コントロールの管理に有益な可能性があるものの、その過剰な摂取
は、血中トリグリセライドの上昇や体重増加を来す懸念がある。純粋な果糖の糖尿病状態への影響を
検討したメタ・アナリシスでは、1 日 100 g 以内であれば、果糖摂取によって血糖値と血中トリグリ
セライドは改善し、体重増加は来さないと報告されている 52)。果物の摂取に関しては、糖尿病の発症
リスクの低下と関連するとの報告がある 53,54)。一方、果汁飲料摂取は糖尿病患者の HbA1c 値を改善
しないという報告や 55)、果汁飲料や加糖飲料の摂取は糖尿病の発症リスクを高めたとの報告もある
54–57)。糖尿病では果物の摂取を勧めてよいと考えられるが、その量は病態による個別化が必要である。
また、果汁飲料や、果汁を含むものであっても加糖飲料の過剰な摂取には注意が必要であり、果物と
果汁飲料の血糖コントロールに与える影響の差異は食物繊維の含有による影響の差によるものと推
察されている。
Glycemic index(GI)とは、炭水化物を含む食品を食べた際の食後の血糖値の上昇しやすさを示す指
標である。日本人において、低 GI の食品の摂取量が多いほど、糖尿病発症リスクが減少したとの報
告もある 58)。また、2 型糖尿病の血糖コントロールに対して、低 GI 食と高 GI 食とを比較したメタ・
アナリシスや 59)、低 GI と異なるパターンの食事とを比較したメタ・アナリシスがあり 60–63)、結果、
低 GI 食では HbA1c が低下すると報告されている。
日本糖尿病学会の
「糖尿病診療ガイドライン 2024」
22)においても、2 型糖尿病の血糖コントロールのために低 GI 食は有用であるとされている。
2-4 たんぱく質
たんぱく質、特に動物性たんぱく質の摂取量の増加が糖尿病の発症リスクになるとする研究結果が
報告されている 64,65)。スウェーデンで行われた前向きコホート研究では、たんぱく質エネルギー比率
が 20%エネルギーと 12%エネルギーの者で糖尿病発症リスクを比較すると、高たんぱく質群(20%エ
ネルギー)ではハザード比が 1.27 であったと報告している 66)。また、2 型糖尿病患者を対象とした検
討では、たんぱく摂取量と血糖コントロール不良の関連が報告されている 67)。
国外での報告は、動物性たんぱく質摂取量が多いことが糖尿病発症リスクとなるが、この関係は植
物性たんぱく質では認められないこと 68–71)、さらに、食事から摂取するたんぱく質を動物性から植物
性に置き換えることで、2 型糖尿病の発症リスクが軽減される可能性も報告されている 72,73)。また、
437