「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (321 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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母乳中のマンガン濃度(11 µg/L)79)、0~5 か月児の乳児の基準哺乳量(0.78 L/日)5,6)、マンガン吸
収率(1~5%)より、授乳に伴うマンガン損失に見合う摂取量は、〔11 µg/L×0.78 L/日÷(0.01~0.05)
=172~858 µg/日〕と算出できる。この量は、18〜29 歳日本人女性のマンガン摂取量中央値 2.8 ㎎/日
を目安量として 3.0 mg/日に丸めた範囲内であることから、授乳によるマンガンの損失は無視できる
と考え、非授乳婦と同じ目安量を適用した。
3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 摂取状況
マンガンは、穀物や豆類等の植物性食品に豊富に含まれている 111)。このため、厳密な菜食等、特異
な食事形態に伴って過剰摂取が生じる可能性がある。
3-2-2 耐容上限量の策定方法
・成人・高齢者(耐容上限量)
EFSA は、マンガンの過剰摂取によって神経毒性が生じることは明らかであるが、マンガン摂取量
とマンガン誘発神経毒性との用量反応関係が明確でないことから、耐容上限量を設定することはでき
ないとしている 126)。そして、ヨーロッパの成人におけるマンガン摂取量分布の 95 パーセンタイル値
である 8 mg/日をマンガンの安全な摂取量の上限として示している 126)。
47 人のアメリカ人女性に 15 mg/日のマンガンを 25 日間投与した研究では、血清マンガン濃度が有
意に上昇している 127)。また、穀類、豆類、木の実等を中心としたアメリカの菜食者の食事では、習慣
的なマンガン摂取量が最大で 10.9 mg/日に達すると推定されている 128)。アメリカ・カナダの食事摂取
基準では、これらの報告に基づき、マンガンの健康障害発現量を 15 mg/日、健康障害非発現量を 11
mg/日と推定している 121)。
一方、我が国の菜食者の女性 12 名の食事を陰膳収集して分析した研究では、マンガン摂取量(平
均値±標準偏差)を 7.5 ± 2.2 mg/日と報告しており 129)、我が国の菜食者においても 10 mg/日に近いマ
ンガン摂取が生じる可能性がある。
以上より、アメリカ・カナダの食事摂取基準が健康障害非発現量としている 11 mg/日を用い、習慣
的な摂取量に基づく値であることから、不確実性因子を 1 として、11 mg/日を成人男女共通の耐容上
限量とした。
・小児・乳児(耐容上限量)
十分な報告がないため、小児及び乳児の耐容上限量は設定しなかった。
・妊婦(耐容上限量)
妊娠初期から中期にかけての血中マンガン濃度の上昇が大きい場合、妊娠高血圧症を誘発するリス
クを上昇させるという報告がある 130)。妊婦の血中マンガン濃度は妊娠初期から末期まで週数を経る
ごとに高くなると報告されており 131)、妊娠の進行に伴ってマンガンの吸収率が鉄と同様に上昇して
いる可能性がある。十分な報告がないため、耐容上限量は設定しなかったが、妊娠後期に血中マンガ
ン濃度が高い場合に低出生体重児の割合が高いことが報告されていることから 124)、妊娠中にはマン
ガン摂取が過剰にならないように注意すべきである。
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