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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (337 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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⑧ モリブデン(Mo)
1 基本的事項
1-1 定義と分類
モリブデン(molybdenum)は、原子番号 42、元素記号 Mo のクロム族元素の 1 つである。

1-2 機能
モリブデンは、キサンチンオキシダーゼ、アルデヒドオキシダーゼ、亜硫酸オキシダーゼの補酵素
(モリブデン補欠因子)として機能している 230)。先天的にモリブデン補欠因子、又は亜硫酸オキシ
ダーゼを欠損すると、亜硫酸の蓄積により脳の萎縮と機能障害、痙攣、水晶体異常等が生じ、多くは
新生児期に死に至る 231)。モリブデンをほとんど含まない高カロリー輸液を用いた完全静脈栄養を 18
か月間継続されたアメリカのクローン病患者において、血漿メチオニンと尿中チオ硫酸の増加、血漿
と尿中尿酸及び尿中硫酸の減少、神経過敏、昏睡、頻脈、頻呼吸等が発症している 232)。これらの症状
がモリブデン酸塩の投与で消失したことから、この症例はモリブデン欠乏だと考えられている。しか
し、モリブデン欠乏に関する報告はこの一例のみである。

1-3 消化、吸収、代謝
モリブデンを 22、72、121、467、1,490 µg/日摂取した状態で、別に経口摂取したモリブデン安定同
位体の吸収率は 88~93%である 233)。食品中モリブデンの吸収率として、大豆中のモリブデンが 57%、
ケール中のモリブデンが 88%という報告がある 234)。しかし、20 代の日本人女性を対象として 145
~318 µg/日のモリブデンを含有する献立を用いた出納試験は、大豆製品が多い献立でも吸収率低下は
生じず、食事中モリブデンの吸収率を 93%と推定している 235)。モリブデンの尿中排泄はモリブデン
摂取量と強く相関するので 233,235)、モリブデンの恒常性は吸収ではなく尿中排泄によって維持される
と考えられる。

2 指標設定の基本的な考え方
アメリカ人男性を対象に行われた出納実験 233,236)より平衡維持量を推定し、推定平均必要量と推奨
量を算定した。耐容上限量の策定に関しては、アメリカ・カナダの食事摂取基準 237)や欧州食品科学
委員会 238)では、ラットの健康障害非発現量(900 µg/kg 体重/日)239)に不確実性因子 30 又は 100 を適
用して成人の値を定めているのに対して、食事摂取基準ではアメリカ人男性を対象に行われた実
験 233)及び菜食者のモリブデン摂取量 129)から総合的に判断して値を設定した。

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