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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (332 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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一方、成人の耐容上限量の参照値である 6.7 µg/kg 体重/日を小児に適用した場合、9~10 歳と 12~14
歳の値(男女の平均値)は、それぞれ 241 µg/日と 323 µg/日となる。これらの値は、ベネズエラの高
セレン地域の小児のセレン摂取量の 50 パーセンタイル未満の値であると判断できるので、成人の耐
容上限量の参照値(6.7 µg/kg 体重/日)を小児に適用することは妥当と考えた。以上より、小児の耐容
上限量は、成人の耐容上限量の参照値に性別及び年齢区分ごとの参照体重を乗じて設定した。
・乳児(耐容上限量)
アメリカ・カナダの食事摂取基準 185)では、母乳中のセレン濃度が 60 µg/L であっても、乳児にセレ
ンによる健康障害が認められなかったという研究 207,208)があることから、これに哺乳量を乗じて得ら
れた 47 µg/日を乳児の耐容上限量としている。しかし、これらの研究の 1 つには、毛髪と爪のセレン
中毒症状がごく少数例観察されている 208)。乳児の耐容上限量を算定するためのデータは不十分であ
ると判断し、設定を見合わせた。
・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
十分な報告がないため、妊婦及び授乳婦に特別な耐容上限量は設定しなかった。

3-3 生活習慣病等の発症予防
セレンと心血管系疾患に関するコホート研究と介入研究をまとめたメタ・アナリシスは、コホート
研究において対象者全体の平均血清セレン濃度が 106 µg/L 未満の場合、血清セレン濃度の高い群にお
いて心血管系疾患発症リスクが低下するが、対象者全体の平均血清セレン濃度が 106 µg/L 以上の場合
のコホート研究及びセレンサプリメントを投与した介入研究(投与量の中央値 200 µg/日)において
は、セレンと心血管系疾患発症との間の関連を認めないとしている 209)。また、セレンと高血圧に関
する疫学研究をまとめた論文は、セレン状態と高血圧との間に関連はないと結論している 210)。他方、
アメリカとイギリスでの大規模な横断研究は、血清セレン濃度と血中脂質(コレステロール及びトリ
グリセリド)の関連がU字型であることを示している 211,212)。
以上のことは、セレン摂取が少なく、セレノプロテイン類の合成が飽和していない集団においては、
セレン状態が低い場合に心血管疾患や脂質異常症の発症リスクが高まるが、セレノプロテイン合成が
飽和している場合には、セレン状態とこれらの疾患との間に関連がないことを示唆している。中国の
セレン欠乏症が発生している地域の健康な住民(平均体重 58 kg)に、0〜125 µg/日のセレンをセレノ
メチオニンとして投与した研究では、セレン投与量が 35 µg/日以上で血漿セレノプロテインP量が飽
和している 213)。この研究での対象者の平均セレン摂取量が 14 µg/日であったことから、セレン摂取量
が 49 µg/日以上で血漿セレノプロテインP量が飽和するといえる。以上より、セレン摂取量が約 50
µg/日未満の場合に、生活習慣病の発症リスクが高まる可能性はあるが、定量的なデータが不十分であ
るため、生活習慣病の発症予防のための目標量(下限値)の設定は見送った。
一方、皮膚がん既往者に 200 µg/日のセレンサプリメントを平均 4.5 年間投与したアメリカの介入研
究において、対象者を血清セレン濃度に基づいて 3 群に分けて検討すると、セレン濃度が最も高い
(121.6 µg/L 以上)群において 2 型糖尿病発症率の有意な増加が認められている 214)。観察研究におい
ても、血清セレン濃度の上昇が糖尿病発症リスクの増加に関連することが認められている 215–217)。34
の観察研究のメタ・アナリシスでは、血中セレン濃度及びセレン摂取量と糖尿病発症のリスクが正に
相関することが示され、セレン摂取量 55 µg/日に比べ、80 及び 120 µg/日ではリスク比が摂取量に応
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