「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (472 ページ)
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公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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1 骨粗鬆症と食事の関連
1-1 概念と定義
骨粗鬆症は、
「骨量の低下と骨質の劣化により骨強度が低下し、骨折のリスクが増大する骨格疾患」
と定義されている 1)。骨強度の 70%は骨量、30%は骨質によって規定されると考えられている 2)。骨
量は骨密度で評価され、骨密度は二重エネルギーX 線吸収法で測定される骨塩量を骨の投影面積で除
したもので、骨粗鬆症の診断には大腿骨近位部と腰椎を用いるのが基本である。また、骨質には骨の
材質特性、微細構造、骨代謝回転、微小骨折、骨組織の石灰化度など多くの要素が含まれ、材質特性
は尿中血中老化架橋物質等、微細構造は高解像度定量的 CT スキャン等、骨代謝回転は骨代謝マーカ
ー、微小骨折と骨組織の石灰化度は骨生検等で評価される。
骨粗鬆症は原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症に分類される 3)。後者には副甲状腺機能亢進症等の内
分泌疾患、胃切除や吸収不良症候群による栄養障害、糖質コルチコイド剤等による薬剤性、糖尿病、
関節リウマチ、慢性腎臓病、慢性閉塞性肺疾患などによるものがある。続発性骨粗鬆症の管理は原疾
患の管理が基本で、原疾患によって最適な食事摂取は異なるので、本項では、原発性骨粗鬆症を扱う。
「原発性骨粗鬆症の診断基準の 2012 年度改訂版」4)では、問診、身体診察、血液・尿検査、骨密度
測定、脊椎X線検査等から、低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患又は続発性骨粗鬆症を認めず、骨評
価の結果が次に述べる条件を満たす場合、原発性骨粗鬆症と診断することとしている。まず、脆弱性
骨折があり、その部位が大腿骨近位部か椎体であった場合は骨密度に関係なく骨粗鬆症と診断する。
骨折部位がそれ以外の場合は、骨密度が若年成人平均値(young adult mean:YAM)の 80%未満であ
れば、骨粗鬆症と診断する。脆弱性骨折がない場合は、骨密度が YAM の 70%以下又は-2.5 標準偏差
(SD)以下の場合は骨粗鬆症と診断する。骨密度が -2.5 SD より大きく、-1.0 SD 未満の場合は骨量
減少と呼び、-1.0 以上の場合は正常とする(表1)。
表1 原発性骨粗鬆症の診断基準
I.
脆弱性骨折*1 あり
1.椎体骨折*2 または大腿骨近位部骨折あり
2.その他の脆弱性骨折*3 があり、骨密度*4 が YAM の 80%未満
II.
脆弱性骨折なし
骨密度*4 が YAM の 70%以下又は -2.5 SD 以下
YAM:若年成人平均値(腰椎では 20~44 歳、大腿骨近位部では 20~29 歳)
*1
軽微な外力によって発生した非外傷性骨折。軽微な外力とは、立った姿勢からの転倒か、それ以下の外力をさす。
*2
形態椎体骨折のうち、3 分の 2 は無症候性であることに留意するとともに、鑑別診断の観点からも脊椎 X 線像を確認すること
が望ましい。
*3
その他の脆弱性骨折とは、軽微な外力によって発生した非外傷性骨折で、骨折部位は肋骨、骨盤(恥骨、坐骨、仙骨を含む)、
上腕骨近位部、橈骨遠位端、下腿骨。
*4
骨密度は原則として腰椎または大腿骨近位部骨密度とする。また、複数部位で測定した場合にはより低い%値または SD 値を採
用することとする。腰椎においては第一腰椎~第四腰椎または第二腰椎~第四腰椎を基準値とする。ただし、高齢者において、
脊椎変形などのために腰椎骨密度の測定が困難な場合には大腿骨近位部骨密度とする。大腿骨近位部骨密度には頸部または
total hip(totalproximal femur)を用いる。これらの測定が困難な場合は橈骨、第二中手骨の骨密度とするが、この場合は%のみ
使用する。
日本骨代謝学会日本骨粗鬆症学会合同原発性骨粗鬆症診断基準改訂検討委員会. 原発性骨粗鬆症の診断基準(2012 年度改訂版)、
表 1 を一部改変。
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