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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (329 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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⑥ セレン(Se)
1 基本的事項
1-1 定義と分類
セレン(selenium)は原子番号 34、元素記号 Se の第 16 族元素の 1 つである。

1-2 機能
セレンは、セレノシステイン残基を有するたんぱく質(セレノプロテイン)として生理機能を発現
し、抗酸化システムや甲状腺ホルモン代謝において重要である。ゲノム解析の結果、ヒトには 25 種
類のセレノプロテインの存在が明らかにされている。代表的なものに、グルタチオンペルオキシダー
ゼ(GPX)、ヨードチロニン脱ヨウ素酵素、セレノプロテインP、チオレドキシンレダクターゼ等が
ある 178)。
セレン欠乏は、心筋障害を起こす克山病(Keshan disease)、カシン・ベック病(Kashin-Beck disease)
等に関与している 178)。また、完全静脈栄養中に、血漿セレン濃度の著しい低下、下肢筋肉痛、皮膚の
乾燥・薄片状等を生じた症例 179)、心筋障害を起こして死亡した症例 180)等が報告され、セレン欠乏症
と判断された。類似症例は、我が国でも報告されている 181)。

1-3 消化、吸収、代謝
食品中のセレンの大半はたんぱく質に結合したセレノメチオニンであり、次いでセレノプロテイン
に由来するセレノシスチンである 182)。これらの含セレンアミノ酸は消化に伴って遊離し、ほとんど
が吸収される 178)。尿中セレン濃度はセレン摂取量と強く相関する 183)。血漿又は血清セレン濃度もセ
レン摂取量と強く相関する。世界 13 地域のセレン摂取量と血清セレン濃度の一覧 184)を用いると、セ
レン摂取量(µg/日:Y)と血清セレン濃度(µg/L:X)との間には、一定の範囲で回帰式〔Y=0.672X
+2(相関係数=0.91)〕が得られる。したがって、個人又は集団の平均的なセレン摂取量は、尿中セ
レン濃度、血漿又は血清セレン濃度から推定することができる。

2 指標設定の基本的な考え方
セレノプロテイン類の合成量は、セレン摂取量に依存して変化し、セレン摂取量が一定量を超える
と飽和する 178)。このため、2001 年に公表されたアメリカ・カナダの食事摂取基準 185)はセレノプロテ
インとして血漿 GPX、2010 年代に公表された各国の食事摂取基準 186–188)はセレノプロテインとして
血漿セレノプロテインPを選択し、これらの飽和に必要な摂取量を基にセレンの推定平均必要量と推
奨量を策定している。
一方、WHO は、血漿 GPX 活性値が飽和値の 2/3 の値であればセレン欠乏症と考えられる克山病が
予防できることから、血漿 GPX 活性の飽和値の 2/3 の値を与えるセレン摂取量をセレンの必要量と
している 189)。セレン摂取量が少なく、住民の血漿や赤血球の GPX 活性値が未飽和の地域はいくつか
存在するが 190–192)、それらの地域にセレン欠乏症は出現していない。したがって、セレン欠乏症予防
の観点からは、必要量は、WHO が示す血漿 GPX 活性値が飽和値の 2/3 となるときのセレン摂取量で
十分と考えられる。以上より、WHO の考え方を参照し、克山病のような欠乏症の予防の観点から推
定平均必要量及び推奨量を策定した。

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