「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (467 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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腎臓は、リンやカルシウムの代謝調節に重要な役割を果たしており、腎機能の低下に伴って生じる
リン・カルシウム・骨代謝異常は CKD-mineral and bone disorder(CKD-MBD)と呼ばれている。高リ
ン血症を含む CKD-MBD は、心血管疾患の発症・重症化や生命予後及び腎機能の悪化に関係すること
が知られている 1)。
リン摂取量はたんぱく質摂取量と正の相関関係にあり、一般にたんぱく質 1 g 当たりのリンは約 15
mg とされる 67)。つまり、リン摂取量はたんぱく質摂取量に影響され、たんぱく質制限を行うことは
リン制限につながると考えられる。一方、ステージ G3~G4 を対象とした無作為化比較試験では、リ
ン制限食と通常食で 3 か月後の血清リン値に違いがなかった 68)。また、アルブミン尿の存在する eGFR
>45 mL/min/1.73m2 の CKD 症例に対して低リン食と高リン食の影響を比較した研究では、3 週間後の
アルブミン尿に両群で変化がなかったことが報告されている 69)。以上から、現時点では、特に早期
CKD においてリン摂取量を制限する科学的根拠は十分でなく、CKD における適切なリン摂取量を定
めることは困難である。
リンの生物学的利用率は供給源によって異なり、動物性たんぱく質では 40~60%、植物性たんぱく
質では 20~40%となっている。早期 CKD でのリンの供給源別の生命や腎機能への予後や心血管イベ
ントの影響は、現状では明らかではない。ステージ G2~G4 を対象とした観察研究では、植物性たん
ぱく質の摂取割合が高い群においては血清リンの上昇が認められなかった 70)。この研究では、リン利
尿ホルモンで心血管病発症との関連が示唆されている線維芽細胞増殖因子 23(FGF-23)が、植物性た
んぱく質の摂取割合が高い群において低下していた 70)。また、日本人での縦断研究でも、動物性たん
ぱく質を植物性たんぱく質に 3%置き換えることで、血清 FGF-23 が低下する可能性があることが報
告されている 71)。これらを考慮すると、リンの供給源によるリスクを否定することはできない。
一方、食品加工に用いられる無機リンでは生物学的利用率が 90%以上となっている。しかし、食品
添加物としてのリンの使用量の表示義務がないため、現時点では食品添加物を考慮したリンの総摂取
量の計算は難しい。さらに、リンの 24 時間尿中排泄量がリン摂取量を必ずしも反映しないという報
告 72)や、リン摂取量の血清リン値への影響は時間帯によって異なるとの報告 73)もあり、リン摂取量、
特に無機リンの正確な評価は困難である。しかし、加工食品などリンを多く含んでいる食品を大量に
摂取している場合は、リンの過剰摂取が考えられるため、指導等の注意が必要である。
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