「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (460 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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CKD 患者に必要なエネルギー量を決めるためには、総エネルギー消費量と目標とする体重を設定
する必要がある。以下に総エネルギー消費量、目標体重及び各学会から提唱されている推奨エネルギ
ー量を示す。
2-1-1 CKD 患者の総エネルギー消費量
二重標識水法は総エネルギー消費量の推定に最も客観的な方法であるが、大掛かりな装置が必要で
あり、測定中の活動も制限されるため、CKD 患者を対象とした報告は極めて少ない。多くの研究は、
間接熱量計を用いて総エネルギー消費量を推定している。
安定した CKD 患者では総エネルギー消費量は健常人と変わらないか、あるいは軽度低下している
ことが報告されている。40 歳代の慢性腎不全患者(平均クレアチニン 8.0 ± 2.4 mg/dL)と健常者を比
較すると、安静時及び座位のエネルギー消費量は両群間で差がなかった 8)。一方で、lean body mass
(LBM)で補正すると、ステージ G2~G5 患者ではエネルギー消費量が有意に低かった 9)。また、最
近の研究では、二重標識水法から計算した総エネルギー消費量は eGFR と相関しないことが報告され
ている 10)。
エネルギー消費量の主な規定因子は、1) 身体活動量、2) 体重(骨格筋量)、3) たんぱく質・エネ
ルギー摂取量である。50 歳以上の地域居住住民では、軽度の CKD(平均 eGFR 50 ml/min/1.73 m2)が
あると機能的制限があり、手段的及び基本的 ADL が低下するリスクが高い 11)。日本の地域在住高齢
者においては、座位時間(sedentary time)が 1 日 8 時間以上であると CKD の合併リスクが 1.42 倍に
なり 12)、さらに、CKD があると介護保険が新規に必要となるリスクが高くなるとの報告がある 13)。
また、eGFR が 50 ml/min/1.73 m2 未満の CKD 患者はエネルギー消費量が低いが、その理由として、体
重が軽く、身体活動量が少ないことが関連することが挙げられる 10)。
さらに、中国の地域在住高齢男性について eGFR と食事記録から推定したエネルギー摂取量を比較
すると、eGFR が 52.9~61.9 ml/min/1.73 m2 より低いとエネルギー摂取量が有意に少ない傾向があった
14)。また、別の中国の研究では、非糖尿病のステージ G3 患者のエネルギー摂取量は平均 26.3 kcal/kg/
日であり、40.9%が目標の摂取量を下回ると報告されている 15)。
以上より、軽度の CKD においては、身体活動量及びエネルギー摂取量が少なく、総エネルギー消
費量の低下に関与している可能性がある。
小児では、身体的成長とともに知能的発達のために年齢に応じて推定されるエネルギー必要量が
100%必要であり、身体活動量と体格に応じて調整することが推奨される 16)。成長曲線で身長・体重
の評価により摂取エネルギーが適正(不足・過剰)か評価し調整する 16)。
2-1-2 体重の目標値
「慢性腎臓病に対する食事療法基準 2014 年版」では、BMI が 22 kg/m2 を標準体重として用いるこ
とが推奨されている 6)。日本人の食事摂取基準では、目標とする BMI の範囲は 18~49 歳で 18.5~
24.9、50~69 歳で 20.0~24.9、70 歳以上で 21.5~24.9 kg/m2 としている。
特定健診を受けた 40~79 歳の日本人において、CKD の新規発症に関連する BMI は男性で 23.0
kg/m2 以上、女性で 27.0 kg/m2 以上と報告されている 17)。一方、日本人では肥満(BMI≧25 kg/m2)が
あっても、メタボリックシンドロームの診断項目を満たさなければ、肥満は CKD の発症リスクとな
らない 18)。また、20~50 歳代の健康な日本人男性では、BMI≧22 kg/m2、ウエスト周囲長>80 cm か
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