「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (334 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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1 基本的事項
1-1 定義と分類
クロム(chromium)は原子番号 24、元素記号 Cr のクロム族元素の 1 つである。クロムは遷移元素
であるため、様々な価数をとるが、主要なものは 0、+3、+6 価である。食品に含まれるのは 3 価ク
ロムであるので、食事摂取基準が対象とするのは 3 価クロムである。
1-2 機能 219,220)
耐糖能異常を起こしたラットやヒトの糖尿病の症例に薬理量の 3 価クロム化合物を投与すると、症
状の改善が認められる。3 価クロムによる糖代謝改善の機構については様々なモデルが提示されてい
るが、結論は得られていない。糖代謝改善に関わるクロムを含む画分や分子を耐糖因子(GTF)、低
分子性クロム化合物(LMWCr)、クロモデュリンと呼んだこともあるが、この呼称も使われなくなっ
ている。一方、実験動物に低クロム飼料を投与しても糖代謝異常は全く観察できない。またクロム含
有量は加工食品で高く、生鮮食品でクロムを多く含むものは見当たらない。これらのことから、3 価
クロムによる糖代謝の改善は薬理作用にすぎず、クロムを必須の栄養素とする根拠はないとする説が
有力である。
1-3 消化、吸収、代謝 220)
食事中の 3 価クロムは 1%未満が受動拡散によって吸収される。吸収されたクロムは、血液中をト
ランスフェリンに結合した状態で輸送され、トランスフェリン受容体を介して細胞内に取り込まれる。
尿は 3 価クロムの主な排泄経路である。
2 指標設定の基本的な考え方
必須の栄養素ではない可能性が高いクロムであるが、クロムサプリメントが市販されていることか
ら食事摂取基準に含め、成人に関して、クロム摂取量に基づいた目安量及び耐容上限量を設定する。
この目安量は、サプリメント等での積極的摂取を促すものでは全くない点に留意が必要である。
3 健康の保持・増進
3-1 欠乏の回避
3-1-1 目安量の策定方法
・成人・高齢者(目安量)
献立のクロム濃度を実測した報告から、日本人を含む成人のクロム摂取量は 20~80 µg/日の範囲と
推定できる 220)。一方、日本食品標準成分表 2020 年版(八訂)を利用してクロム摂取量を算出すると、
約 10 µg/日という値が得られ 142)、化学分析による摂取量推定値との間に大きな乖離が認められる。さ
らに、同一献立について食品成分表を用いた算出値と化学分析による実測値を比較した場合にも、同
様の乖離が認められている 221)。このように、日本人のクロム摂取量に関しては、化学分析による実
測値と、食品成分表を用いた算出値との間に大きな乖離が認められ、正確な数値を推定することは難
しい。実測値と計算値との乖離の理由には、日本食品標準成分表においてクロム含量の記載のない食
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