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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (339 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 摂取状況
モリブデンは穀類や豆類に多く含まれることから、穀物や豆類の摂取が多い日本人のモリブデン摂
取量は欧米人よりも多く、平均的には 225 µg/日 242)、大豆製品を豊富に含有する献立の場合は容易
に 300 µg/日を超えると報告されている 235)。
3-2-2 耐容上限量の策定方法
・成人・高齢者(耐容上限量)
ヒトのモリブデン中毒に関する研究は少ない。食事からのモリブデン摂取量が 0.14~0.21 mg/kg 体
重/日の人に高尿酸血症と痛風様症状を観察したという報告がある 243)。アメリカ環境保護庁(EPA)
は、この報告に基づき、モリブデンの最低健康障害発現量を 140 µg/kg 体重/日、不確実性因子を 30 と
して得られる 5 µg/kg 体重/日を、モリブデン慢性経口曝露の参照値としている 244)。WHO もこの参照
値を採用している 240)。しかし、全米研究評議会は、この報告の高尿酸血症と痛風様症状にモリブデ
ンが関与していることは疑わしいとしている 245)。
4 人のアメリカ人にモリブデン 1,490 µg/日を 24 日間摂取させた上で、更にモリブデン安定同位体
を経口投与した実験では、モリブデンの平衡は維持され、有害な影響は認められていない 233,234)。こ
の実験でのモリブデンの総投与量である約 1,500 µg/日を健康障害非発現量と考えて、被験者の平均体
重 82 kg で除し、不確実性因子 2 を適用すると 9 µg/kg 体重/日になる。この値に、成人の性別及び年
齢区分ごとの参照体重を乗じて平均すると、男性が 585 µg/日、女性が 464 µg/日となる。一方で、我
が国の穀物と豆類の摂取が多い厳格な菜食者(成人女性 12 名、平均体重 49.1 kg)の献立を分析した
研究では、モリブデン摂取量の平均値を 540 µg/日と報告しているが、健康障害は認められていない 129)。
以上、アメリカ人を対象にした実験及び我が国の女性菜食者のモリブデン摂取量を総合的に判断し、
成人のモリブデンの耐容上限量は、年齢区分に関わらず、男性 600 µg/日、女性 500 µg/日とした。な
お、ここで設定した成人男性の耐容上限量は、ラットの健康障害非発現量 239)に基づいて設定されて
いる欧州食品科学委員会 238)の値と同じである。
・小児・乳児(耐容上限量)
十分な報告がないため、小児及び乳児の耐容上限量は設定しなかった。
・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
十分な報告がないため、妊婦及び授乳婦に特別な耐容上限量は設定しなかった。

3-3 生活習慣病の発症予防
モリブデンが生活習慣病の発症予防に直接関連するという報告はない。したがって、生活習慣病発
症予防のための目標量は設定しなかった。

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