「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (458 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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イヌリンクリアランスであるが、測定方法が煩雑であるため、日常診療で用いることは難しい。そこ
で、血清クレアチニン値を用いた日本人(18 歳以上)の GFR 推算式に基づいた推算 GFR(estimated
GFR:eGFR)が使用される 2)。
男性:eGFRCr (mL/分/1.73 m2)=194×Cr-1.094×年齢-0.287
女性:eGFRCr (mL/分/1.73 m2)=194×Cr-1.094×年齢-0.287×0.739
Cr:血清クレアチニン値 (mg/dL)
血清クレアチニン値による eGFR は、筋肉量が極端に減少している高齢者では GFR を過大評価す
る可能性がある 3)。そのような場合には、血清シスタチンC値を用いた eGFR を使用する 4)。
小児については、2 歳以上であれば、小児の推算式によって得られた eGFR を用いて、成人と同様
ステージを決める 1)。乳児期の腎機能は発達途中(生理的に低い GFR)であり、CKD のステージは同
月齢の腎機能に対する割合で判定するため血清クレアチニン値で判断する。また、エビデンスに乏し
いため、ステージ 3 の細分化・蛋白尿による分類は行わない 1)。
1-2 発症予防と重症化予防の基本的考え方と食事の関連
CKD の原因には様々なものがある。腎炎などの一次性腎疾患、多発性嚢胞腎、ループス腎炎、移植
腎などの専門的管理を要する病態と、糖尿病性腎症や高血圧性腎硬化症などの二次性腎疾患がある 1)。
一次性腎疾患などは予防が難しいが、糖尿病性腎症や高血圧性腎硬化症などの生活習慣に関連した
CKD の発症予防には、糖尿病や高血圧の治療や生活習慣の是正など集学的管理を行う。また、CKD
を早期に発見するためには、健康診断などで腎機能を定期的に検査しておくことが重要である。また、
CKD が発見された際には、原因疾患の検索を行う。
また、年齢とともに腎機能は低下するため、我が国では高齢者の増加に伴って CKD 患者は増加す
ることが予想される。日本透析医学会による「我が国の慢性透析療法の現況(2021 年末)」によると、
透析患者全体の平均年齢は 69.67 歳であり、平均年齢は年々高くなる傾向がある 5)。この透析患者の
うち、最も人数が多い年齢層は男女とも 70~74 歳であり、65 歳以上の患者数が増加傾向にあるのに
対し、64 歳以下の患者数は減少傾向を示している。また、保存期 CKD 患者の年齢を 70 歳、血清クレ
アチニン値を 1.0 mg/dL と仮定して、eGFR を上述の推算式を用いて計算すると、男性の場合は 57.3
mL/分/1.73 m2、女性では 42.4 mL/分/1.73 m2 となる。つまり、高齢者の多くは潜在的に腎機能が低下
していると予想される。しかしながら、CKD は末期腎不全に至るまで症状が出ないことが多く、CKD
の合併に気づいていない潜在的な患者が存在する可能性が高いため、必要があれば血清クレアチニン
値や eGFR を検査し腎機能を評価する。日本腎臓学会による「エビデンスに基づく CKD 診療ガイド
ライン 2023」では、eGFR 45 mL/分/1.73 m2 未満(ステージ G3b 以降)を、医療機関への受診勧奨の
基準としている 1)。また、高齢 CKD 患者では合併症を伴うことが多いため、各患者の状態を考慮し
なければならない。
CKD は進行することにより、末期腎不全に至る。CKD 診療の第一の目的は、末期腎不全へ至るこ
とを防ぐ、又は末期腎不全へ至る時間を遅らせることである。CKD を早期に発見し適切な治療を行え
ば、腎機能の悪化を抑制して透析導入患者数を減少させることも可能である。CKD の重症化の危険因
子としては、高齢、高血圧、尿蛋白異常、腎機能異常、糖尿病、脂質異常症、肥満、喫煙などが報告
されている 3)。これらの危険因子を有する者に対しては、早期から生活習慣の改善などの指導や治療
が必要である。
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