「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (127 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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6-4 生活習慣病の重症化予防
n-3 系脂肪酸摂取と循環器疾患予防との関連を検討した介入試験をまとめたメタ・アナリシスでは、
発症予防と同様に重症化予防においても、両者の間に意味のある関連を認めていない 42)。一方で、EPA
及び DHA の摂取が血中のトリグリセライド高値や LDL-コレステロール高値の集団に対して有意な
冠動脈疾患発症リスクの低下を認めたという介入試験のメタ・アナリシスの報告がある 41)。長鎖 n-3
系脂肪酸の介入研究や、EPA 及び DHA の量反応関係で介入研究をまとめたメタ・アナリシスでは、
血中トリグリセライドを下げる効果を認めている 41,48)。また、飽和脂肪酸を多価不飽和脂肪酸(現実
的には n-3 系脂肪酸よりも n-6 系脂肪酸が大部分を占める)に置き換えた場合の効果も期待されてい
る 15)。この他の詳細については、『4 飽和脂肪酸、4-4 重症化予防』の項を参照されたい。
7 その他の脂質
7-1 一価不飽和脂肪酸
7-1-1 基本的事項
一価不飽和脂肪酸には、ミリストオレイン酸(14:1n-7)、パルミトオレイン酸(16:1n-7)、オレ
イン酸(18:1n-9)、エルカ酸(22:1n-9)などがある。一価不飽和脂肪酸は食品から摂取されるとと
もに、⊿9 不飽和化酵素(desaturase)と呼ばれる二重結合を作る酵素により、飽和脂肪酸から生体内
でも合成ができる。
7-1-2 摂取状況
平成 30・令和元年国民健康・栄養調査における日本人成人(18 歳以上)の摂取量の中央値は、25.3
g/日(男性)、20.7 g/日(女性)である。
7-1-3 健康の保持・増進
7-1-3-1 生活習慣病の発症予防
一価不飽和脂肪酸摂取量と総死亡率、循環器疾患死亡率、脳卒中死亡率、心筋梗塞死亡率の関連を
検討したコホート研究の結果をまとめたメタ・アナリシスでは、どの指標でも有意な関連を観察して
いない 49)。一方、このメタ・アナリシスでは一価不飽和脂肪酸摂取量/飽和脂肪酸の比が総死亡率や
循環器疾患死亡率と有意な負の関連を示した 49)。また、一価不飽和脂肪酸摂取量に関する別のコホー
ト研究のメタ・アナリシスでは、総死亡率と負の関連を認めている報告もある 50)。飽和脂肪酸の置き
換えの影響を検討したコホート研究のメタ・アナリシスでは、飽和脂肪酸を一価不飽和脂肪酸に置き
換えた場合、総死亡率の低下を認めている 15)。
以上のように、一価不飽和脂肪酸が主な生活習慣病の予防にどのように、そしてどの程度寄与し得
るか(又はリスクになるか)はまだ明らかではないと考え、一価不飽和脂肪酸の目標量は設定しなか
った。しかし、一価不飽和脂肪酸もエネルギーを産生するため、肥満予防の観点から過剰摂取に注意
すべきである。
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