「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (115 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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脂質は、細胞膜の主要な構成成分であり、エネルギー産生の主要な基質である。脂質は、脂溶性ビ
タミン(A、Ⅾ、E、K)やカロテノイドの吸収を助ける。脂肪酸は、炭水化物あるいはたんぱく質
よりも、1 g 当たり 2 倍以上のエネルギー価を持つことから、ヒトはエネルギー蓄積物質として優先
的に脂質を蓄積すると考えられる。コレステロールは、細胞膜の構成成分であり、肝臓において胆汁
酸に変換される。また、性ホルモン、副腎皮質ホルモンなどのステロイドホルモンの前駆体となる 1)。
n-6 系脂肪酸と n-3 系脂肪酸は、体内で合成できず、欠乏すると皮膚炎などが発症する。したがっ
て、これらは必須脂肪酸である。
2 指標設定の基本的な考え方
脂質は、エネルギー産生栄養素の一種であり、この観点からたんぱく質や炭水化物の摂取量を考慮
して設定する必要がある。このため、脂質の食事摂取基準は、1 歳以上については目標量として総エ
ネルギー摂取量に占める割合、すなわちエネルギー比率(%エネルギー)で示した。乳児については、
目安量としてエネルギー比率(%エネルギー)で示した。また、飽和脂肪酸については、生活習慣病
の予防の観点から目標量を定め、エネルギー比率(%エネルギー)で示した。一方、必須脂肪酸であ
る n-6 系脂肪酸及び n-3 系脂肪酸については、目安量を絶対量(g/日)で算定した。
他の主な代表的な脂肪酸、すなわち、一価不飽和脂肪酸、α-リノレン酸、eicosapentaenoic acid(EPA)
並びに docosahexaenoic acid(DHA)とコレステロールについては、今回は、指標の設定には至らず、
必要な事項の記述に留めた。また、その健康影響が危惧されているトランス脂肪酸についても必要な
事項の記述を行った。
3 脂質(脂肪エネルギー比率)
3-1 基本的事項
脂質全体には、必須栄養素としての働きはない。その一方で、エネルギー供給源として重要な役割
を担っている。また、脂質の一部を構成する脂肪酸のうち、多価不飽和脂肪酸(n-6 系脂肪酸及び n-3
系脂肪酸)は必須栄養素である。さらに、脂質の一部を構成する脂肪酸のうち、飽和脂肪酸は、生活
習慣病に関連することが知られている栄養素である。
3-2 摂取状況
平成 30・令和元年国民健康・栄養調査 2 か年における脂質摂取量の中央値は、表1のとおりであ
る。
また、日本人成人(31~76 歳、男女各 92 人)における脂質及び主な脂肪酸の摂取量(平均)は、
図2のとおりである 2)。日本人成人が最も多く摂取している脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸であり、以
下、飽和脂肪酸、多価不飽和脂肪酸と続いている。
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