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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (434 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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2-1-7 その他
図1には、特に重要なものを示したが、その他に栄養素摂取との関連で記述しておいた方がよいも
のを、以下に整理した。
・一価不飽和脂肪酸
一価不飽和脂肪酸は油脂、肉、乳、魚、卵など多くの動物性又は植物性食品から摂取されている。
炭水化物を同量のエネルギーを有する一価不飽和脂肪酸に置き換えた研究では、血清総コレステロー
ル及び LDL-コレステロールとの有意な関連は示されなかった 11)。脂質異常症患者における高一価不
飽和脂肪酸食は、高飽和脂肪酸食よりも総コレステロール、LDL-コレステロール、HDL-コレステロ
ールを低下させ、別の無作為化比較試験でも飽和脂肪酸を一価不飽和脂肪酸に置換することで、総コ
レステロール、LDL-コレステロールを低下させている 15,61,62)。14 の無作為化比較試験を解析したメ
タ・アナリシスでは、飽和脂肪酸の一価不飽和脂肪酸への置き換えにより、LDL-コレステロール低下
が観察されたが、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸との比較では有意差は認められていない 63)。
さらに、15 の無作為化比較試験を解析したメタ・アナリシスでは、飽和脂肪酸を一価不飽和脂肪酸に
置き換えた場合に、血清脂質への明らかな影響は認められていない 10)。一方、12 の無作為化比較試験
を解析したメタ・アナリシスでは、高一価不飽和脂肪酸摂取群(12%エネルギーを超えるもの)と低
一価不飽和脂肪酸摂取群(12%エネルギー以下)では総コレステロール、LDL-コレステロールに有意
差を認めていない 64)。一価不飽和脂肪酸と心血管疾患との関係においては、死亡や発症リスクに影響
を及ぼさなかったとするメタ・アナリシス 10)があるが、炭水化物を植物食品由来の一価不飽和脂肪酸
での置き換え、又は飽和脂肪酸を植物由来食品の一価不飽和脂肪酸に置き換えた場合には死亡や発症
リスクの低下が認められている 25,65)。以上より、一価不飽和脂肪酸摂取の増加で、血清脂質改善の可
能性、さらに植物由来食品からの摂取では心血管疾患リスク低下の可能性があるが、摂取量が多いと
その効果がなくなることも示唆されており、適正な総エネルギー摂取量の下での摂取が勧められる。
・トランス脂肪酸
トランス脂肪酸は LDL-コレステロールを上昇させ、HDL-コレステロールを低下させる作用がある
が、トリグリセライドの変動に関しては一定した見解は得られていない 66,67)。しかし、トランス脂肪
酸を含む植物油を他の油脂に置換した無作為化比較試験のメタ・アナリシスでは、一価不飽和脂肪酸
又は多価不飽和脂肪酸に置換した場合に総コレステロール、LDL-コレステロール、トリグリセライド
の有意な低下と HDL-コレステロールの上昇が認められている 68)。またコホート研究のメタ・アナリ
シスでは、置換解析の結果、トランス脂肪酸を飽和脂肪酸、一価不飽和脂肪酸又は多価不飽和脂肪酸
に置換した場合に算出される冠動脈疾患リスクの低下が示されている 68)。アメリカのコホート研究で
は、トランス脂肪酸摂取量は総死亡リスク及び心血管疾患死亡リスクの上昇との関連が示されている
25,69)。日本人に関するものでは、メタボリックシンドローム患者及び若年の冠動脈疾患患者で、工業

由来のトランス脂肪酸であるエライジン酸血中濃度が高かったという横断研究がある 70)。トランス脂
肪酸の摂取量が少ない場合(1%エネルギー未満)は、血清 LDL-コレステロールへの影響は同時に摂
取する飽和脂肪酸の量によっても規定される可能性がある 71–74)。我が国のトランス脂肪酸摂取量は、
他国と比較しても低く、平均値で世界保健機関(WHO)が推奨する 1%エネルギー未満を下回ってお
り 75)、通常の食生活ではトランス脂肪酸の摂取による健康への影響は小さいと考えられる。しかし、
日本人においてもトランス脂肪酸の摂取量は 1%エネルギー未満に留めることが望ましく、1%エネル
ギー未満でもできるだけ低く留めることが望ましいと考えられる。脂質の多い菓子類の食べ過ぎなど
偏った食事をしている場合は平均値を上回る摂取量となる可能性があるために注意が必要である。

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