「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (226 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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1 基本的事項
1-1 定義と分類
ビオチンとは、図 11 に示した構造式を有したビオチン活性を有する化合物である。d-異性体のみ
が生理作用を有する。
日本食品標準成分表(七訂)1)及び日本食品標準成分表(八訂)2)に従い、食事摂取基準の数値はビ
オチン相当量として示した。
O
HN
NH
H2
C
S
C
H2
H2
C
C
H2
COOH
図 11 ビオチンの構造式(C10H16N2O3S、分子量=244.3)
1-2 機能
ビオチンは、カルボキシ化反応を触媒するカルボキシラーゼの補酵素として機能する。特に、ピル
ビン酸カルボキシラーゼの補酵素として糖新生、アセチル CoA カルボキシラーゼの補酵素として脂
肪酸合成に重要な役割を果たす。ビオチンには、抗炎症物質を生成することによってアレルギー症状
を緩和する作用がある。ビオチン欠乏症は、リウマチ、シェーグレン症候群、クローン病などの免疫
不全症だけではなく、1 型及び 2 型の糖尿病にも関与している。ビオチンが欠乏すると、乾いた鱗状
の皮膚炎、萎縮性舌炎、食欲不振、むかつき、吐き気、憂うつ感、顔面蒼白、性感異常、前胸部の痛
みなどが惹起される。
1-3 消化、吸収、代謝
生細胞中のビオチンは、ほとんどがたんぱく質中のリシンと共有結合した形態で存在する。食品の
調理・加工過程において、ほとんど遊離型になることはない。消化管においては、まずたんぱく質が
分解を受け、ビオチニルペプチドやビオシチンとなる。これらが加水分解された後、最終的にビオチ
ンが遊離し、主に空腸から吸収される。消化過程は食品ごとに異なり、同時に摂取する食品の影響も
受ける。相対生体利用率を網羅的に検討した報告は見当たらない。日本で食されている平均的な食事
中のビオチンの遊離型ビオチンに対する相対生体利用率は、80%程度であると報告されている 4)。卵
白に含まれる糖たんぱく質であるアビジンは、ビオチンと不可逆的に結合するため、ビオチンの吸収
を妨げる。
2 指標設定の基本的な考え方
ビオチン欠乏症を実験的に再現できず、推定平均必要量を設定できないことから、摂取量の値を用
いて、目安量を設定した。
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