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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (476 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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2-2 ビタミンD
ビタミンDは骨の石灰化を促進するため、ビタミンDの欠乏は石灰化障害を惹起し、類骨が増加す
る小児ではくる病、成人では骨軟化症を発症させる。小腸においてはカルシウム吸収を促進し、その
欠乏はカルシウム吸収の低下を来して、副甲状腺機ホルモンの上昇を介して骨吸収を亢進させる。
ビタミンD栄養状態の指標としては、血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度があり、食事からの供給
並びに皮膚への紫外線照射によって産生された体内のビタミンD量を反映する。日本骨代謝学会・日
本内分泌学会の「ビタミンD不足・欠乏の判定指針」では、血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度が 20
ng/mL 未満をビタミンD欠乏、20 ng/mL 以上 30 ng/mL 未満をビタミンD不足と定義している 33)。
血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度が 20 ng/mL 以上では、カルシウム吸収率低下(小児・成人)、
骨量の低下(小児・若年者)のリスク低下が見られることが知られている 34)。既に骨粗鬆症を有する
例においては、ビタミンDが不足することにより、負のカルシウムバランスから、二次性副甲状腺機
能亢進症を起こし、骨折リスクを増加させる 35)。我が国の 50 歳以上の女性を対象としたコホート研
究では、血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度が低いほど用量依存的に骨折発生率は上昇することが報
告されている 36)。しかしながら、骨折リスクの低下が観察される血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度
には研究によってばらつきがあり、おおむね 20 ng/mL が閾値とされているが、現時点ではそれ以上
の血中濃度を維持することで骨折リスクをさらに低下させるか否かは明確でない 37,38)。
このように血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度が低いことは、骨粗鬆症のリスク要因であると考え
られる。一方、通常の食品からビタミンDの摂取を増やした場合に、骨密度や骨折リスクを低下させ
るかについては、ほとんど報告が見当たらない。この理由の 1 つとして、ビタミンDは日光曝露によ
り皮膚で産生されることから、食事によるビタミンD摂取量と骨粗鬆症の関連の評価が難しいことが
ある。
ビタミンDのサプリメントの付加による骨密度への影響についてはメタ・アナリシス含めて報告が
多いが、結果は十分に一致していない 39–41)。主に中高年を対象とした 13 の無作為化比較試験のメタ・
アナリシスでは、ビタミンDサプリメント投与群(平均 29 µg/日)では、対照群よりも大腿骨頸部骨
密度の変化率が加重平均差で 0.8%大きくなったが、腰椎や大腿骨近位部骨密度では有意差は認めら
れなかった 42)。また、別のメタ・アナリシスでは、約 7 割の介入試験において、20 µg/日を越えるビ
タミンD補給で、腰椎、大腿骨近位部、大腿骨頸部の骨密度変化率が有意に大きくなることを示して
いる 43)。しかし、一般に骨密度の測定精度は、変動係数で 1%程度であり、これを超える骨密度変化
率の差はみられていない。ビタミンD単独ではなく、カルシウムの併用による効果を検討した研究を
みると、無作為化比較試験のメタ・アナリシスでは、大腿骨近位部骨折リスクを 39%、全骨折リスク
を 26%低下させることを示している 44)。別のメタ・アナリシスでは、ビタミンDとカルシウムの併用
投与は大腿骨近位部骨折リスクを 16%、非椎体骨折リスクを 14%、全骨折リスクを 5%それぞれ低下
させるとある 45)。ただし、ビタミンDとカルシウムの併用投与であっても、有意な骨折リスクの低減
効果が見られないメタ・アナリシスもあり 27,46–48)、その関連については結論が出ていない。
以上から、ビタミンDの栄養状態として、血中 25-ヒドロキシビタミンD濃度を 20 ng/mL 以上に保
つことは、骨粗鬆症の予防の観点から重要と考えられる。しかしながら、サプリメントによる介入研
究の結果を含めても、ビタミンDの付加による骨粗鬆症リスクの低減効果については、今後の検証が
必要である。体内のビタミンDの維持のため、食事からの摂取を行うとともに、適切な日光曝露を図
ることが望ましい。

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