「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (448 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
関与することを示唆している 74)。近年、赤身肉や加工肉と 2 型糖尿病発症リスクとの関連が相次いで
報告されており、1 日当たり 100 g 超の赤身肉の摂取が糖尿病発症リスクを増加させるとする報告が
ある一方で 75,76)、赤身肉や加工肉を卵、乳製品、植物性たんぱく質などへ置き換えることで、糖尿病
の発症リスクが軽減される可能性も報告されている 71,77–81)。
このように、総たんぱく質摂取量の増加、そして、赤身肉や加工肉の過剰な摂取が糖尿病の発症リ
スクの増加や血糖コントロールの悪化につながる可能性が報告されている。しかし、これらの報告の
多くは国外の観察研究をもとにしたものであり、欧米人と比較して動物性たんぱく質の摂取量が少な
い日本人において、更に動物性たんぱく質の摂取量を減らすことの意義は明らかでない。実際、日本
人 2 型糖尿病患者を対象とした観察研究において、75 歳以上の高齢者では、たんぱく質摂取量が少な
いほど死亡率が高いとの報告もある 82)。よって、日本人糖尿病患者おけるたんぱく質摂取量の至適範
囲に関しては、画一的な設定をすることは難しく、患者背景によって柔軟に対応する必要がある。
2-5 脂質
糖尿病患者は非糖尿病者に比べて、脂質摂取量、特に動物性脂質の摂取量が多いとの報告がある 83)。
国外の前向きコホート研究では、総脂質摂取量が糖尿病発症リスクになるとの報告がある一方で 84)、
総脂質摂取量を BMI で調整すると糖尿病発症リスクとの関連が消失するとの報告や 85)、総脂質摂取
量は糖尿病発症リスクにならないとする報告がある 86)。しかし、国外の研究では脂質摂取量が 30%エ
ネルギーを超えており、30%エネルギーを下回る日本人の平均的な摂取状況にある者については、糖
尿病の予防のために総脂質摂取量を制限する根拠は乏しい。また、脂質摂取制限の体重減少効果を検
証した最近のメタ・アナリシスでは、有意な効果が見出されてはいない 87)。ただし、多くの研究にお
いて、飽和脂肪酸の摂取量が多いことが糖尿病の発症リスクになり、多価不飽和脂肪酸がこれを低減
するとされている 84,88–90)。また、2011 年のメタ・アナリシスでは、多価不飽和脂肪酸の摂取量の増加
は、HbA1c 値の低下をもたらすことが示されている 91)。日本人の観察研究からも、女性では総脂質及
び脂肪酸の摂取と 2 型糖尿病発症との関連は見られないものの、男性では、総脂質、一価不飽和脂肪
酸及び n-3 系脂肪酸の摂取が多いほど 2 型糖尿病の発症リスクが低いことが報告されている 92)。また
一方で、トランス脂肪酸の摂取量が多いことが 2 型糖尿病の発症リスクとなる可能性も報告されてい
る 93)。このように、糖尿病の発症・重症化予防の観点から、日本人における適正な脂質及び各種脂肪
酸摂取比率を設定する積極的根拠は乏しいのが現状であるが、動脈硬化の原因となる脂質異常症の予
防・改善のためには、コレステロールや飽和脂肪酸を多く含む食品の摂取過多を避け、多価不飽和脂
肪酸を含む食品の摂取が望まれる。
2-6 食物繊維
2 型糖尿病患者を対象に、良好な血糖コントロールを目的とした積極的な食物繊維摂取の有用性が
示されている 94–100)。2 型糖尿病患者を対象としたメタ・アナリシスによると、3 週間~12 週間の食物
繊維の高摂取により、HbA1c 値や空腹時血糖値の有意な低下が報告されている 94,95)。また日本人の 2
型糖尿病患者の研究を含む、水溶性食物繊維摂取の有用性を検討したメタ・アナリシスでも、食物繊
維の高摂取群では HbA1c 値 95,96,98–100)、と空腹時血糖値 95,98–100)、食後 2 時間血糖値 99)が有意に低下
し、インスリン抵抗性の指標である HOMA-IR も改善したと報告されている 95)。用量反応解析を行っ
た研究では、水溶性食物繊維の摂取量として推奨される範囲は 7.6~8.3 g であった 99)。
438