「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (269 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
ページ画像
プレーンテキスト
資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。
収率が約 60%82)であるのに対して、その吸収率は約 27~47%とやや低いと報告されている 105)。
6 か月以降の乳児については、母乳と離乳食、双方に由来するカルシウムを考慮する必要がある。
6~11 か月の哺乳量(0.53 L/日)14,15)と母乳中のカルシウム濃度の平均値(250 mg/L)10,11,15)から計算
される母乳由来の摂取量(131 mg/日)に、各月齢における離乳食由来のカルシウム摂取量から得られ
る 6~11 か月の摂取量(128 mg/日)16)を足し合わせたカルシウム摂取量は 261 mg/日となり、丸め処
理を行って 250 mg/日を目安量とした。
3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 耐容上限量の策定方法
・成人・高齢者(耐容上限量)
カルシウムの過剰摂取によって起こる障害として、高カルシウム血症、高カルシウム尿症、軟組織
の石灰化、泌尿器系結石、鉄や亜鉛の吸収障害、便秘などが挙げられる 58)。ミルクアルカリ症候群の
症例報告を見ると、3,000 mg/日以上の摂取で血清カルシウムは高値を示していた 58)。以上より、不確
実性因子を 1.2、最低健康障害発現量を 3,000 mg とし、耐容上限量は 2,500 mg とした。なお、諸外国
の食事摂取基準でも、カルシウムの耐容上限量はそれまでのエビデンスから 2,500mg/日とし、実際に
そのレベルの摂取で問題となる健康障害がみられないことから設定されている 49,103)。日本人の通常
の食品からの摂取でこの値を超えることはまれであるが、サプリメントなどを使用する場合に注意す
るべき値である。2008 年、2010 年にカルシウムサプリメントの使用により、心血管疾患のリスクが
上昇することが報告されている 106,107)。この報告に対しては様々な議論がある 108)が、通常の食品では
なく、サプリメントやカルシウム剤の形での摂取には注意する必要がある。また、活性型ビタミンD
製剤との併用によっては、より少ない摂取量でも血清カルシウムが高値を示すこともあり得る。
・小児(耐容上限量)
17 歳以下の耐容上限量は、十分な報告がないため設定しなかった。しかし、これは、多量摂取を勧
めるものでも多量摂取の安全性を保証するものでもない。
3-3 生活習慣病の発症予防
3-3-1 主な生活習慣病との関連
カルシウムと高血圧、脂質異常症、糖尿病及び慢性腎臓病との間には、特に強い関連は認められて
いない 109,110)。
2019 年に発表された観察研究のメタ・アナリシスでは、カルシウム摂取量が多いと高血圧発症のリ
スクがわずかに低かったと報告されている 111)。介入研究のメタ・アナリシスでは、カルシウム摂取
量の平均値は 1,200 mg/日で、収縮期血圧及び拡張期血圧はそれぞれ 1.86 mmHg、0.99 mmHg の低下
を示した 112)。しかし、別のメタ・アナリシスでは、カルシウム補給により収縮期血圧は 2.5 mmHg の
低下を認めたものの、カルシウム補給による介入試験は質の良くないものもあり、科学的根拠は十分
とはいえないとの見解が述べられている 113)。
259