「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (217 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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1 基本的事項及び定義
1-1 定義と分類
葉酸活性をもつ化合物の総称を葉酸(folate)という。体内には異なる構造を持った葉酸(folate)が
複数存在し、その大半は 5-メチルテトラヒドロ葉酸(分子量は 459.3)(図9)である。また、これら
は複数のグルタミン酸が結合したポリグルタミン酸型として存在する。主な補酵素型は、5-メチルテ
トラヒドロ葉酸、5,10-メチレンテトラヒドロ葉酸、10-ホルミルテトラヒドロ葉酸である。一方、葉酸
(folic acid)は、プテロイルモノグルタミン酸(分子量は 441.4)
(図9)だけを指す。葉酸(folic acid)
は自然界には稀にしか存在せず、ヒトが摂取する葉酸(folic acid)はサプリメントや強化食品など、
通常の食品以外の食品に含まれるものに限られ、人為的に合成されたものである。
以下、上述の定義に基づき、総称を指す場合は「葉酸(folate)」、プテロイルモノグルタミン酸を
指す場合を「葉酸(folic acid)」と呼ぶこととする。日本食品標準成分表(七訂)1)及び日本食品標準
成分表(八訂)2)は、葉酸(folate)の含有量を葉酸(folic acid)相当量として記載している。そこで、
食事摂取基準でも葉酸(folic acid)相当量として数値を示した。
H2N
N
N
O
H
N
CH2 NH
N
CH3
COOH
CO NH CH
CH2
CH2
COOH
5-メチルテトラヒドロ葉酸
(C20H25N7O6、分子量=459.3)
H2N
N
N
N
N
OH
CH2 NH
COOH
CO NH CH
CH2
CH2
COOH
プテロイルモノグルタミン酸
(C19H19N7O6、分子量=441.4)
図9 5-メチルテトラヒドロ葉酸とプテロイルモノグルタミン酸の構造式
1-2 機能
葉酸(folate)はメチル基(-CH3)やホルミル基(-CHO)など 1 つの炭素を有する官能基(一炭
素単位)を転移させる酵素の補酵素として機能する。葉酸(folate)は、メチル化反応、アミノ酸代謝、
DNA 及び RNA の合成に必要なプリンヌクレオチド及びデオキシピリミジンヌクレオチドの合成にお
いて重要な役割を果たす。葉酸(folate)の欠乏により、DNA 合成が抑制され、巨赤芽球性貧血が起
こる。また、葉酸(folate)の不足は、動脈硬化の引き金等になる血清ホモシステイン値を高くする。
1-3 消化、吸収、代謝、食事性葉酸当量
食品中の葉酸(folate)は、調理・加工の過程や、摂取された後、胃の中(胃酸環境下)や小腸内で
たんぱく質から遊離する。遊離した葉酸(folate)のほとんどは腸内の酵素によって消化され、モノグ
ルタミン酸型の 5-メチルテトラヒドロ葉酸となった後、小腸から促通拡散あるいは受動拡散によって
吸収されて血管内に輸送され、細胞内に入る。細胞内で、5-メチルテトラヒドロ葉酸はポリグルタミ
ン酸化され、様々な補酵素型に変換されてから利用される。
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