「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (327 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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我が国と同様に海藻類の消費が多い韓国において、早産児として出生し、TSH 濃度の上昇から潜在
性甲状腺機能低下症と考えられる乳児の母乳からのヨウ素摂取量を生後 3 週目で 149.0 µg/kg 体重/日、
生後 6 週目で 91.2 µg/kg 体重/日と見積もる研究がある 171)。両者の平均値である 120.1 µg/kg 体重/日
を乳児におけるヨウ素の最低健康障害発現量と考え、不確実性因子を 3 として、40 µg/kg 体重/日を乳
児の耐容上限量の参照値とした。参照値に参照体重を乗じると、0~5 か月の男児 252 µg/日、女児 236
µg/日、6~11 か月の男児 352 µg/日、女児 324 µg/日となる。それぞれの月齢の男女の平均値(0~5 か
月 244 µg/日、6〜11 か月児 338 µg/日)を丸めた数値を男女共通の耐容上限量とした。
・妊婦・授乳婦(耐容上限量)
日本の妊産婦のヨウ素の摂取量については食物摂取頻度調査票を用いた調査が存在するのみであ
り 172)、正確な実態は不明である。妊娠女性 7,190 人を対象にした中国での研究は、尿中ヨウ素排泄
が 500 µg/L を超える集団では甲状腺機能低下を起こすリスクが明らかに高まっていることを示して
いる 173)。このヨウ素排泄量は 50 kg の女性において約 600 µg/日のヨウ素摂取に相当する。しかし、
中国における高ヨウ素摂取は、ヨウ素添加食卓塩又はヨウ素濃度の高い地下水の利用による連続的な
ものであり、間欠的高摂取である日本人にそのまま適用することはできない。実際に、我が国ではヨ
ウ素に起因する妊婦の甲状腺機能低下はほとんど報告されていない。
一方、甲状腺機能低下を示した我が国の新生児に関して、母親の妊娠中のヨウ素摂取量を 1.9~4.3
mg/日と見積もる報告がある 174,175)。しかし、この報告は、摂取量の推定法の詳細が明確でなく、妊婦
の耐容上限量を策定する根拠としての信頼性は低い。このように、我が国の妊婦を対象とした報告は
十分ではないが、妊娠中はヨウ素過剰への感受性が高いと考えられるため 176)、妊婦は非妊娠女性よ
りもヨウ素の過剰摂取に注意する必要がある。
一方、0〜5 か月児では、哺乳量を 0.78 L/日 5,6)とすると、母乳中ヨウ素濃度が 320 µg/L を超えると
耐容上限量 250 µg/日を超えるヨウ素摂取量となる。母親のヨウ素摂取量と母乳中ヨウ素濃度の関係
式は不明であるが、母乳のヨウ素濃度を高くしない観点から、授乳婦のヨウ素の過剰摂取にも注意す
る必要がある。以上より、妊婦と授乳婦の耐容上限量は、成人女性の耐容上限量(3,000 µg/日)に不
確実性因子 1.5 を用いて 2,000 µg/日とした。
3-3 生活習慣病等の発症予防
ヨウ素摂取と生活習慣病の発症の関連を直接検討した報告はないため、目標量を設定する必要はな
いと判断した。
4 生活習慣病等の重症化予防
ヨウ素摂取と生活習慣病の重症化の関連を直接検討した報告はないため、重症化予防のための量を
設定する必要はないと判断した。
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