よむ、つかう、まなぶ。

MC plus(エムシープラス)は、診療報酬・介護報酬改定関連のニュース、

資料、研修などをパッケージした総合メディアです。


「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (223 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
低解像度画像をダウンロード

資料テキストはコンピュータによる自動処理で生成されており、完全に資料と一致しない場合があります。
テキストをコピーしてご利用いただく際は資料と付け合わせてご確認ください。

⑦ パントテン酸
1 基本的事項
1-1 定義と分類
パントテン酸活性を有する化合物を総称してパントテン酸という。遊離型パントテン酸の化学名は
パントテン酸(図 10)である。補酵素A(コエンザイムA、CoA)が補酵素として機能する。食品中
には、パントテン酸のほかに、CoA、アシル CoA、アシルキャリアたんぱく質(ACP)、4’-ホスホパ
ンテテインの形態でも存在する。これらは消化管でパントテン酸にまで消化された後、体内に取り込
まれるため、パントテン酸と等モルの活性を示す。
日本食品標準成分表(七訂)1)及び日本食品標準成分表(八訂)2)に従い、食事摂取基準の数値はパ
ントテン酸相当量として示した。

HO

H

CH3 OH O

C

C

H

CH3 H

C

C

H

H

N

C

C

H

H

H

COOH

図 10 パントテン酸の構造式(C9H17NO5、分子量=219.2)

1-2 機能
パントテン酸の生理作用は、CoA や ACP を構成する 4’-ホスホパンテテインがアシル基と結合する
ことによって発揮される。アシル CoA はクエン酸回路(TCA 回路)、脂肪酸のβ酸化、脂肪酸合成
経路、コレステロール合成経路などの様々な代謝経路で、ACP は脂肪酸合成経路に関与する。特に脂
質代謝、エネルギー産生に重要な役割を果たす。パントテン酸はギリシャ語で「どこにでもある酸」
という意味で、広く食品に存在するため、ヒトでの欠乏症はまれである。パントテン酸が不足すると、
細胞内の CoA 濃度が低下するため、成長停止や副腎傷害、手や足のしびれと灼熱感、頭痛、疲労、不
眠、胃不快感を伴う食欲不振などが起こる。

1-3 消化、吸収、代謝
生細胞中のパントテン酸の大半は、補酵素型の CoA の誘導体であるアセチル CoA をはじめとする
アシル CoA として存在している。また、4’-ホスホパンテテインのように、酵素たんぱく質と結合し
た状態で存在している形態もある。食品を調理・加工する過程及び胃酸環境下で、ほとんどの CoA 及
びホスホパンテテイン誘導体は酵素たんぱく質と遊離する。遊離した CoA 及びパンテテイン誘導体
のほとんどは腸内の酵素によって消化され、パントテン酸となった後、吸収される。消化過程は食品
ごとに異なり、同時に摂取する食品の影響も受ける。日本で摂取されている平均的な食事中のパント
テン酸の遊離型パントテン酸に対する相対生体利用率は、70%程度であると報告されている 3,4)。

213