「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (324 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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3-1 欠乏の回避
3-1-1 推定平均必要量、推奨量の策定方法
・成人・高齢者(推定平均必要量、推奨量)
ヨウ素の摂取が適切な状態では、甲状腺のヨウ素蓄積量と逸脱量は等しく、ヨウ素濃度は一定とな
るので、甲状腺へのヨウ素蓄積量を必要量とみなすことができる。アメリカの成人男女 18 人(平均
年齢 26 歳、平均体重 78.2 kg)を対象とした報告では、甲状腺へのヨウ素蓄積量(平均値±標準偏差)
を 96.5 ± 39.0 µg/日としている 140)。また、男女 274 人(年齢、体重不明)を対象としたアメリカの研
究は、ヨウ素蓄積量の平均値を 91.2 µg/日と報告しており 141)、これらの値は近接している。そこで、
年齢が明らかである前者の研究の値(96.5 µg/日)を日本人のヨウ素必要量を推定する参照値とした。
日本人のヨウ素の最大の供給源は昆布及び昆布出汁であり 142)、その内訳は、
昆布 60%、
昆布出汁 30%、
その他 10%と推定されている 143)。代表的な昆布製品である削り昆布に含まれるヨウ素の吸収率はヨ
ウ化物よりも低く、約 70%と見積もる研究が存在する 138)。以上より、日本人の食事からのヨウ素の
吸収率は約 80%と推定できる。この 80%を 96.5 µg/日に適用すると必要量は 120.6 µg/日となる。この
値を、体重 78.2 kg の日本人の必要量と考え、性別年齢層別の参照体重と 78.2 kg の比の 0.75 乗を用い
て外挿し、性別年齢層別の必要量を算定した。そして、得られた性別年齢層別の値の平均値である 97.2
µg/日を丸めた 100 µg/日を、成人男女共通のヨウ素の推定平均必要量とした。
上記のアメリカの研究 140)から個人間変動を推定することは困難だが、アメリカ・カナダの食事摂
取基準では、変動係数(39.0/96.5=0.40)の半分(0.2)を個人間変動としている 144)。この考え方に従
い、成人男女共通の推奨量は、個人間の変動係数を 20%と見積もり、推定平均必要量に推奨量算定係
数 1.4 を乗じて得られる 136 µg/日を丸めた 140 µg/日とした。
・小児(推定平均必要量、推奨量)
小児については、根拠となる報告がない。そのため、体重 78.2 kg の成人における必要量を、78.2 kg
と当該年齢の参照体重の比の 0.75 乗と成長因子を用いて外挿し、得られた値の男女の平均値を丸め、
各年齢層の推定平均必要量とした。推奨量は、個人間の変動係数を 20%と見積もり、推定平均必要量
に推奨量算定係数 1.4 を乗じた値とした。
・妊婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
新生児の甲状腺内ヨウ素量は 50~100 µg であり、その代謝回転はほぼ 100%/日である 145)。この中
間値である 75 µg/日を妊婦への推定平均必要量の付加量とした。18〜29 歳の非妊娠女性の推定平均必
要量(100 µg/日)に付加量(75 µg/日)を加えた 175 µg/日は、5 人の妊婦を対象とした試験で得られ
た出納を維持できる摂取量(約 160 µg/日)146)を上回っている。推奨量の付加量は、個人間の変動係
数を 20%と見積もり、推定平均必要量の付加量に推奨量の算定係数 1.4 を乗じて 110 µg/日とした。
・授乳婦の付加量(推定平均必要量、推奨量)
日本人の母乳中ヨウ素濃度は諸外国に比較して高いが、この母乳中の高ヨウ素濃度は授乳婦の高ヨ
ウ素摂取に起因したものであり、高ヨウ素濃度の母乳分泌に対応して、授乳婦がヨウ素摂取量を増や
す必要はない。
一方、WHO は妊婦と授乳婦に関して、
ヨウ素の推奨摂取量を 250 µg/日としている 147)。
以上より、授乳によって失われるヨウ素を補うには、後述する 0~5 か月児の目安量である 100 µg/日
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