「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (146 ページ)
出典
公開元URL | https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html |
出典情報 | 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》 |
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低分子量水溶性食物繊維と難消化性でん粉も測定されるため、AOAC.2011.25 法の用いられた多くの
食品において食物繊維の成分値がかなり高くなっている。例えば、食品番号 1088 「こめ [水稲めし]
精白米 うるち米」の食物繊維の成分値は、日本食品標準成分表(七訂)では 0.3 g(可食部 100 g 当
たり)、日本食品標準成分表(八訂)では 1.5 g(同)である。食品番号 1085「こめ [水稲めし] 玄米」
の食物繊維の成分値は、日本食品標準成分表の改定前後で測定法が変わっていないため、七訂でも八
訂でも 1.4 g(同)である。食品番号 1026「こむぎ [パン類] 食パン」(八訂では「こむぎ [パン類] 角
形食パン 食パン」)の食物繊維成分値は七訂では 2.3 g(同)、八訂では 4.2 g(同)である。
測定法の変化による成分値の変化率は食品により異なり、一律に係数などを使用して換算すること
は困難である。これは、AOAC.2011.25 法により新たに測定された低分子量水溶性食物繊維や難消化
性でん粉の総食物繊維量に占める割合が、食品によって異なるためである。食品自体の変化ではなく、
測定法の変化により、日本食品標準成分表(七訂)を用いた場合と日本食品標準成分表(八訂)を用
いた場合で、栄養計算の結果得られる食物繊維の提供/摂取量の推計値がかなり異なる(多くの場合、
八訂を用いた方が高くなる 47))ことに留意する必要がある。日本食品標準成分表(七訂)と同じ方法
で食物繊維成分値を測定している日本食品標準成分表(六訂)を使った場合の食物繊維摂取量推定値
と、AOAC.2011.25 法を取り入れている日本食品標準成分表(七訂)追補 2018 年を使った場合の推定
値を比較した報告でも、後者で値が大きくなることが示されている 48)。
日本人の食事摂取基準 2025 年版では食物繊維に関し目標量を定めているが、この根拠としたメタ・
アナリシス 26)に含まれる個々の研究は 1985~2017 年に論文として公表されている。AOAC.2011.25 法
は 2011 年に発表された後、5 年ほど各国で評価が行われており 6)、例えば、米国における食品成分表
に相当するデータ集(FoodData Central)にこの測定法が取り入れられたのは 2019 年以降である 49)。
すなわち、前出のメタ・アナリシスに含まれる研究での栄養計算は、ほとんどの場合、日本食品標準
成分表(七訂)相当の食物繊維測定法が用いられていると考えられる。また、目標量算定の際に考慮
した国民健康・栄養調査における食物繊維摂取量も、日本食品標準成分表(七訂)を用いて算出され
ている。
つまり、本章で示した食物繊維の目標量は、日本食品標準成分表(七訂)相当の測定法を用いて算
定した値である。仮に AOAC.2011.25 法を用いた調査研究に基づき目標量を算定すると、本章で示し
た値よりも相当に高い値となることが予想される。これは、目指すべき食物繊維摂取量として示した
25 g/日と日本人の摂取実態の両方が、AOAC.2011.25 法を用いると高く計算されるからである。日本
食品標準成分表(八訂)を用いて栄養計算を行い、食事提供や摂取量評価を行う際には、本章で示し
た目標量と同等、あるいは少し超える値を提供(摂取)できていたとしても生活習慣病予防の観点か
らは不十分である可能性がある。ただし、日本食品標準成分表(八訂)を用いた栄養計算を行い、そ
の適切性の評価を行う場合、成人においては目指すべき食物繊維摂取量である 25 g/日を目安とする
のも 1 つの方法ではある。
4-2 生活習慣病の重症化予防
食物繊維が数多くの生活習慣病の発症予防に寄与し得ることは前述のとおりであるため、食物繊維
の積極的な摂取がそれらの疾患の重症化予防においても重要であろうと考えられる。例えば、食物繊
維が各種疾患及びその生体指標に及ぼす効果を検証した介入試験をまとめたメタ・アナリシスでは、
体重、血中総コレステロール、LDL-コレステロール、トリグリセライド、収縮期血圧、空腹時血糖で
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