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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (417 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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のガイドラインでは、ナトリウム摂取量の目標値を一般成人では 2,300 mg(食塩相当量 5.8 g)/日未
満、高リスク者では 1,500 mg(食塩相当量 3.8 g)/日未満としている 14)。2003 年以降、WHO の一般
成人向けのガイドラインでは、一般成人において食塩 5 g/日未満の目標値が設定されており、世界全
体の目標となっている 15)。
食塩摂取量と循環器疾患のリスクとの関連についても、多くのエビデンスがある。我が国の国民栄
養調査参加者の 24 年間のコホート研究において、世帯単位の摂取エネルギー1,000 kcal 当たり食塩摂
取量 2 g の増加は、脳心血管死亡 11%、冠動脈疾患死亡 25%、脳卒中死亡 12%及び総死亡 7%の増加
と関連していた 16)。食塩摂取量を 24 時間蓄尿で評価したコホート研究からは特に強いエビデンスが
得られる。複数回の 24 時間蓄尿により食塩摂取量を評価したコホート研究のメタ・アナリシスでは、
食塩摂取量と循環器疾患はほぼ直線的関係であることが示された。また、食塩摂取量の少ない第 1 四
分位群における循環器疾患の増加は認められていない 17)。一方、食塩摂取量と循環器疾患のリスクや
総死亡リスクとのJ字型の関連(低い食塩摂取量におけるリスク上昇)を報告したものがあるが 18,19)、
スポット尿による食塩摂取量の推定値を用いるなど研究方法に問題があり、信頼性は低い 20)。不健康
な食事は、世界全体の循環器疾患を含む非感染性疾患による死亡者数の 22%(約 1,100 万人)の原因
と推計されている。推計死亡者数に寄与する要因に関する検討では、ナトリウム(食塩)の過剰摂取
が最大であった 21)。また、日本を含む東アジア地域では、不健康な食事よる死亡者数は 30%と推計さ
れており、食塩過剰摂取の寄与がより大きい 21)。
減塩により循環器疾患リスクが低下するかを証明するには長期間の大規模な介入試験が必要であ
り容易ではないが、いくつかの報告がある。18~48 か月間の減塩指導群と対照群を 10~15 年追跡し
た TOHP 研究では、25~30%の減塩により長期の循環器疾患リスクが 30%低下したことが報告されて
いる 22)。また、TOHP を含む 4 つの減塩介入試験のメタ・アナリシスでは、減塩が循環器疾患リスク
を抑制することが示されている 23)。
また、小児期からの健康的な食生活の確立も重要である。小児・青年期を対象とした介入試験、観
察研究のメタ・アナリシスでは、ナトリウム摂取量と血圧との正の関連が報告されている 24)。また、
介入試験のメタ・アナリシスでは、減塩は小児の血圧を低下させることが示されている 25)。日本では
伝統的に食塩摂取量が多い 1)。日本人の 3 歳児 26)、4~5 歳児 27)、学童期 28)における食塩摂取量の多
さも報告されている。以上の点から、小児の減塩教育は、将来の高血圧や循環器疾患を予防するため
に重要である 29)。
ナトリウム摂取量の多い集団では加齢に伴う血圧上昇の程度が大きい 3)。コホート研究のメタ・ア
ナリシスのサブグループ解析では、65 歳以上の高齢者においても尿中ナトリウム排泄量の増加は循
環器疾患リスクを増加させることが示された 17)。高齢者は一般に食塩感受性が高く、減塩は有効であ
る 1,12)。しかし、高齢者において過度の減塩や極端な味付けの変化は食事摂取量の低下から低栄養を
おこす場合があるため、減塩指導の際には全身状態の管理に注意する 1)。

2-2 エネルギー
エネルギーの過剰摂取は、肥満を生じさせる。肥満は高血圧の発症・増悪に関連している。例えば、
北海道における 10 年間の縦断研究 30)では、肥満者は非肥満者に比べて高血圧に進展するリスクが約
2 倍であった。コホート研究のメタ・アナリシスでは、BMI、ウエスト周囲長などの肥満指標が増加
すると、高血圧の発症リスクが増加すると報告された 31)。エネルギー制限によって減量すれば血圧が
低下するが、エネルギー制限をしても体重が減らなければ血圧は低下しない。また、我が国の中高年

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