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「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書 (331 ページ)

公開元URL https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_44138.html
出典情報 「日本人の食事摂取基準(2025年版)」策定検討会報告書(10/11)《厚生労働省》
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3-1-2 目安量の策定方法
・乳児(目安量)
0~5 か月児の目安量は、母乳中のセレン濃度(17 µg/L)79)に基準哺乳量(0.78 L/日)5,6)を乗じて得
られる 13.3 µg/日を丸めた 15 µg/日とした。
6~11 か月児に関して、0~5 か月児の目安量(13.3 µg/日)を体重比の 0.75 乗を用いて外挿し、男
女の値を平均すると 17.0 µg/日となる。6~11 か月児の目安量は、この値を丸めた 15 µg/日とした。

3-2 過剰摂取の回避
3-2-1 摂取状況
セレン含有量の高い食品は魚介類であり、植物性食品と畜産物のセレン含有量は、それぞれ土壌と
飼料中のセレン含有量に依存して変動する 196)。日本人は魚介類の摂取が多く、かつセレン含量の高
い北米産の小麦に由来する小麦製品や畜肉類を消費しているため、成人のセレンの摂取量は平均で
約 100 µg/日に達すると推定されている 196)。
3-2-2 耐容上限量の策定方法
・成人・高齢者(耐容上限量)
慢性セレン中毒で最も高頻度の症状は、毛髪と爪の脆弱化・脱落である 197)。その他の症状には、胃
腸障害、皮疹、呼気にんにく臭、神経系異常がある 198–200)。誤飲や自殺目的でグラム単位のセレンを
摂取した場合の急性中毒症状は、重症の胃腸障害、神経障害、呼吸不全症候群、心筋梗塞、腎不全等
である 201–204)。
食品のセレン濃度が高い中国湖北省恩施地域において、脱毛や爪の形態変化を伴うセレン中毒が認
められた。5 人の中毒患者(平均体重 60 kg)の中で最も少ないセレン摂取量は、血中セレン濃度から
913 µg/日と推定された。その後の再調査では、5 人全員がセレン中毒から回復しており、血中セレン
濃度から推定されたセレン摂取量は 800 µg/日だった。この結果から、毛髪と爪の脆弱化・脱落を指標
にした場合、最低健康障害発現量は 913 µg/日、健康障害非発現量は 800 µg/日と理解できる 204)。
アメリカのワイオミング州と南ダコタ州の牧場において、家畜にセレン過剰症が出現したが、住民
にセレン中毒症状は認められなかった。対象者 142 人のセレン摂取量は最大で 724 µg/日だった 205)。
このことは、毛髪と爪の脆弱化・脱落を慢性セレン中毒の指標とした場合のセレンの健康障害非発現
量(800 µg/日)が妥当であることを示している。
以上より、成人及び高齢者の耐容上限量は、体重当たりの健康障害非発現量(800/60=13.3 µg/kg 体
重/日)に不確実性因子 2 を適用した 6.7 µg/kg 体重/日を参照値とし、これに性別及び年齢区分ごとの
参照体重を乗じて設定した。
・小児(耐容上限量)
全血中セレン濃度と尿中セレン濃度の平均値が、それぞれ 813 µg/L と 636 µg/g クレアチニンであ
るベネズエラの高セレン地域の 10~14 歳の小児 111 人は、全血中セレン濃度と尿中セレン濃度の平
均値が、それぞれ 355 µg/L と 224 µg/g クレアチニンである首都カラカスの小児 50 人に比較して、う
歯の保有数及び爪の病理学的変化や皮膚炎等を発症する割合が高いという報告がある 206)。この報告
では、対象となった高セレン地域の小児の平均セレン摂取量を、厳密に求めることが困難であるが、
尿中濃度からは 600 µg/日を超えると推定できる。
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